SNARE COVERが語る「永遠」、喪失を経験して初めて分かるラブソング

─メジャーに行ってからの作詞と、メジャー以前の作詞の違いって言語化できますか?

メジャーに行ってからの方が、細部を意識するようになりましたね。それ以前は曲のタイトルがあって、それに対するサブタイトルみたいな要素が歌詞のどこかに入っていれば、ほかで遊べる感覚があったし、その方が自由な感覚で楽曲と向き合えると思ったんです。甲本(ヒロト)さんがインタビューで「歌詞はぼかさなきゃダメなんだよ。歌詞をハッキリ書きすぎるから今の日本人はダメなんだ」と言っているのを見たんです。それを自分の都合よく受け取ったというか、「うんうん、分かるな」と思って。その感覚がずっと抜けなかったんですよね。その方が楽曲の枠を狭めずに済むし、よりアーティスティックに見えるし、何より楽だったんですよね。ただ、僕の場合は逃げ道でもあったような気がして。メジャーになってから出した2曲に関しては、しっかり歌詞に答えがないとダメだなって。ちゃんと提示しなければいけない責任があるよなって。

─「会いたい」と「好きだ」とか誰もが分かる日本語をサビにして、他の歌詞では文学的だったり直接的ではない表現をする名曲もあるし、その手法を使って売れているアーティストもいますよね?

それはきっと「何を歌っててもいいんだ」というアーティストな気がしてて。僕もそのタイプだったんです。ただ、今の僕の歌は何を歌っていてもいい歌ではないよな、って話で。それを自分だけじゃ分からなかったです。この体制になって、チームのみんなに教えてもらった部分も大きいですね。意味のない言葉を歌っちゃいけないんだっていうところで「この曲はどういうことを歌っているのか、ちゃんと伝えなきゃいけないよ」と言われて「あぁ……そうか」と。今になって、言葉は大事なんだってことに気づいたんです。意味を分かってもらうことが必要なんだって。人を言葉で納得させる必要もあるっていうか、その方がSNARE COVERの音楽はいいんだよ、と教わりました。そこに気づけて「そっか、手を抜いちゃいけないとこなんだな」と思ったんですよね。とはいえいつかは「何を感じてもらっても構わないよ」みたいな曲も作るとは思うんです。でもリード曲としてやっていく曲は、緻密に作っていくことになるだろうなと思いますね。

─歌いたいことをすごく直接的な歌詞にしてしまうと、それは音楽である必要があるのかっていう。逆に、ニュアンスを色々と変えた歌詞にすると、今度は本来伝えたかったことから逸れてしまうっていう。そこのバランス作りは難しいですよね。それで言うと「Hourglass」も「Wedding Bell」も、命のラブソングだなと思ったところはおそらく今日の話を聞いて「やっぱりそうだった」と腑に落ちつつも、歌詞の意味を完全に理解しているわけじゃなくて。「Hourglass」のラストで、どうして砂時計をひっくり返すのかはまだ分かっていないんですね。でも、曲の意図を100%理解できないことが、すごく大事な気がするんです。

いや、そうなんですよ。音楽って、全部が「なるほど、こういうことね」って分かっちゃいけないんですよね。その人にとって大事に思える曲って、誰もが分かるものじゃない。“自分だけが理解できる”部分を持っていたいっていうか。「私はこういうとこに気づいてるけど、あんまり他の人って気づいてないところなのな?」というようなニュアンスの歌詞も絶対的に必要だなと思っているので、おっしゃる通りですね。

─昔は歌詞の意味を理解できなかったけど、大人になって「そういうことか!」と気づく時もあるんですよね。だからストレートに分かる歌詞よりも、なんか分からないけど、何故かずっと引っかかっていて、大人になって理解できた時に一気に大好きになることもあるし。

そうなんですよ。寄り添う部分と、ちょっとだけ突き放さなきゃいけない部分とのバランスっていうのはありますね。

─そういう意味では、今作と前作は絶妙なバランスで作られた2曲だなと思いましたよ。

いやぁ、ありがたいです。本当に悩んで作った甲斐がありました。

Rolling Stone Japan 編集部

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