SNARE COVERが語る「永遠」、喪失を経験して初めて分かるラブソング

─斎藤さんの場合は、曲を書かれる上でご家族のことはもちろん、保護猫や保護犬と一緒に暮らしていることも、音楽に活きていると思うんですね。だからこそ聞きたいのは、僕は15年間一緒に住んでいた猫を亡くして、10年経って新たに保護猫と暮らすことになったんですけど、最初はすごく戸惑いがあったんです。最後に看取ることを分かった上で一緒に住むのは、自分にとってあまりにも残酷で辛いから。

あぁ、そうですよね。

─僕は1匹飼うだけでも重い決断だったのに、斎藤さんは飼い主にネグレクトを受けた子や寿命が短いと分かっている子も受けて入れて、一緒に暮らしている。そういう子たちと対峙するのは、自分も削られるし傷つくと思うんです。どうして、それができるんだろうと思って。

その子のために一心、みたいな感覚なんですよね。動物って物を喋れなくて、自分の意見を言えなくて。それがいかに可哀想なことかってことに気づいているんですね。で、病気を抱えた猫や、ネグレクトを受けた犬とかと関わるのは、その子だけでは人生を変えられないから。その部分にすごく(気持ちが)入ってるんです。この子は病気だし、ネグレクトも受けていて、癌も進行していて絶対に長くないって子も全然います。その子に関しては、いかに残りの命をその子にとって幸せにできるのか。それと向き合うことに、すごくモチベーションがあるんです。1個1個自分が亡くなる時に「あ、これは価値になることかな」と思ったりとか……そういうもの増やして行くべきだって、どこかで考えているんだと思うんです。「何かに貢献したい」って気持ちを、みんなどこかで持っていて。例えば、お金をすごく持っていて、自分で何でも好きなようにできる状況だったとしても、それは何かに貢献できていなかったら、どこかでつまらなくなっていくような気もするんです。そういった意味では、自分の使命と言ったら大きな言い方ですけど、そういう部分を感じているんですね。

─重複しますけど、先が短い子と一緒に生活を始めるのって、すごい覚悟と強い気持ちがないとできないと思うんですよ。

全部が正解にできることばっかりじゃないし、果たして今やってることが自分にとってに全部プラスになっているか?と言ったら削れていってる部分もちろんあります。自分にとって本当にいいことなのか、正解がしっかり見えてない状態で、本当に死がすごく近くに見えてる子達の保護もたくさん経験してると分かってくるんですね。もう近いんだなって。じゃあ、この子達に何をするべきかってことの、するべき手数みたいなものは増えていくんですよ。そこは経験のある自分達にしかできないことで。これ以上、この子に治療を続けることはきっと不幸だろうっていう考えができるようになってくる。必ずしも全ての治療を施すことが幸せじゃなくて、最後はここで治療をパツっと辞めて、それこそアンパンとかチョコパンとか、悪いって言われてる物でもいいから好きなものを食べさせてあげて、その子がこの瞬間でも幸せであればっていう向き合い方をすることも増えました。(少し目を潤ませながら)どうやったら苦しくなく逝くのかっていう方法も、少しずつ覚えていったりとかして。なんか……そういう部分にまで自分は入っていますね。

─保護猫や保護犬を受け入れる活動を始めて、どのくらい経つんですか?

2013年に“わさび”という最初の子から始まって、そこから保護猫の活動が始まっているので、ちょうど10年になりますね。

─死生観って変わりました。

変わりましたね。自分自身が死ぬこと、この世からいなくなることを、より考えるようにもなりますし、そこを本当にリアルに感じるようになるっていうか。不思議でもあるんです。例えば、身内が亡くなっても感じなかった感情を動物たちに抱くことがあって。優劣をつけるべきじゃないし、つけようと思っているわけではないんですけど、自分の祖母や祖父が亡くなる時に、命のケアしてくれる人がいたからじゃないかと思うんです。今自分たちが見ている子達って、もう僕たちしかいない状況なんです。僕たちが最後にどういう形で看取るかとか、どういう形で記憶に焼き付けるかとか、その瞬間を担う人間が僕たちしかいないんだって気持ち。そこが大きいですね。じゃあ、自分の場合は一体誰が見てくれるのか?って考えたりもしますし、それを託す人に対して何を残すべきか?って考えたり。そういうこと考えるようになったかもしれないですよね。……こう考えると、生きて死ぬことばっかり考えてるっていうか。そんなんでいいのかって、自分に対して思っちゃいますけど(苦笑)。

─斎藤さんは生死と身近に向き合っていますからね。改めて思うのが、斎藤さんがやっていることは、ネグレクトや病気で苦しんできた子たちに対して「あなたは生まれてきよかったんだよ」と最後に肯定してあげる人というか。そういう大事な役目を担っているんだなと思って。

そうですね。なので、いなくなった後も悲しみはすごく残るんですけど、やってあげられたことの安心感っていうんですかね。その子がいなくなっても迷わない思い出、いなくなった後にどうなるかって分かんないんですけど、いなくなった後に迷わない道筋っていうのは、それまで幸せだった時とか、一緒にいてくれた人達とか、そういうものなんじゃないかって勝手に思うんです。最後の少しの時間だけども、その子の生死を担う人間でありたいっていうのかな……ですかね。

─今日はありがとうございました。言い残したことはありますか?

いや、大丈夫です。おかげさまで本当に言いたいことを全部言ったと思います。ありがとうございました。



<リリース情報>



SNARE COVER
New Single「Weddin Bell」
2023年10月11日(水)配信リリース
https://snarecover.lnk.to/WeddingBell

<ライブ情報>

SNARE COVER Presents Welcome to My Garden Vol6 November Songs
「新しいセットリスト そして バンドサウンドで初挑戦する MADE IN ABYSSの世界」
2023年11月5日(日)二子玉川 GeminiTheatre
18時30分開場 19時開演
前売り 3500円チケットリンク サービス予約 当日 4000円(ドリンク代 別途いただきます)
出演:
佐藤舞 SNARE COVER with Special Band Drums チャッピー Chappy‘s NION カルメン・マキ&OZ ( ex 千年コメッツ Typhoon NATALi 他) Bass 川上シゲ カルメン・マキ&OZ 岡本健一 with ADDICT OF THE TRIP MINDS 川上シゲwith The Sea (ex 千年コメッツ Typhoon NATALi 他) Piano 梅野渚 (ex MOTELS AJATE 他)

Officia HP:https://snarecoverofficial.ryzm.jp/

Rolling Stone Japan 編集部

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