マネスキンが日本で語るバンドの現在地 「駆け抜けた」一年と新たな始まり

Photo by Haruki Horikawa

マネスキン(MÅNESKIN)の最新ロングインタビュー。初のジャパン・ツアーで再び旋風を巻き起こした4人が怒涛の一年を振り返る。日本で撮り下ろした美麗フォトも必見。

彼らが2021年のユーロヴィジョン・ソング・コンテストで優勝した時、2年半後には日本で4夜のアリーナ公演を軽々と売り切るまでに成長するなどと想像だにしなかったが、未だとどまるところを知らない勢いで、単身ロックンロールとミュージシャンシップの復権を推し進めているマネスキン。2023年に入ってからの4人は、年明けに発表した3rdアルバム『RUSH!』を携えてキャリア最大規模のワールド・ツアーに旅立ち、各地で大舞台を踏んでひとつひとつの体験を学びの機会にして、アルバムのデラックス盤『RUSH!(ARE U COMING?)』の発表をもってこのチャプターに終わりを告げようとしている。ジャパン・ツアー初日を前にしてインタビューに応じてくれたダミアーノ、トーマス、ヴィクトリア、イーサンとそんな1年間の歩みを辿り、バンドの現在地を確かめた。

※2024年2月21日追記:マネスキンがSUMMER SONIC 2024に出演決定。詳細は記事末尾にて

【写真ギャラリー】マネスキン撮り下ろし美麗フォト(全10点)


Photo by Haruki Horikawa

ツアーで深まった4人の絆

ーマネスキンの2023年は『RUSH!』のリリースで始まりました。3rdアルバムではありましたが、世界的な注目を浴びてから最初の作品とあって、デビュー作を改めて送り出したような意識はあったのでしょうか?

ダミアーノ:そういう部分もあるね。自分たちが新人アーティストだと見做されるだろうことは分かっていたから。でも僕らは特に気にしていなかった。むしろここにきて、新しいオーディエンスに対して自己紹介をするチャンスを得たことを楽しんだよ。

ー今回は全員が納得する曲を作ろうとするのではなく、敢えて各メンバーの異なる音楽嗜好を強調するようにして、多様なサウンドを包含するアルバムに仕上げたと発言していました。そういうアルバムを作ったことで、バンドのケミストリーにも影響はありましたか?

ヴィクトリア:特にそういうことはなかったかな。もちろん当初は、これまでとはやり方が少し違って、こういうやり方に慣れないといけないんだという意識はあった。最初に聞いた時はあまり好きになれなかったり、違和感を覚える曲でも、相手を信用して受け入れなくちゃならなかったから。でも長い目で見ると、自分たちがすごく成長できた気がした。若かった頃はもっとバンド内で喧嘩もして、「黙れ~! 私がやりたいことをやってやる!」みたいな感じだったんだけど(笑)、そういうやり方をしていたら、バンドは続かない。みんなが我を通そうとすると無理が生じるわけだし。本当に今回は学ぶことが多くて、以前にも増していい関係を築けたんじゃないかな。音楽的にもっと深く理解し合うことで、個々の人間としてもより分かり合えたというか、嗜好が異なることは対立を意味するのではなく、違いが私たちをひとつに束ねているんだってこと。


Photo by Haruki Horikawa

ー以来2023年はツアーに明け暮れて、『RUSH!』の収録曲を繰り返しプレイしてきました。その間にあれらの曲について新たに発見したこと、あるいは、改めてグっと心に響いた歌詞など、何か気付きはありましたか?

ヴィクトリア:それはすごくあって、ツアーを始めてから曲の聞こえ方がすごく変わって、夜な夜なプレイしているうちに新しい意味を帯びてきた。例えば「DON'T WANNA SLEEP」はライブのオープニング曲に選んだから、今ではあの曲を耳にするたびに、ステージを覆っていた赤いスクリーンがさっと落ちてきてショウが始まる時の気分を思い出して、アドレナリン値がぐっと上がる。それから「KOOL KIDS」はアンコール前のラスト・ソングで毎回オーディエンスをステージに招いてプレイするから、あの情景が思い浮かぶし、「TIMEZONE」はアコースティック・コーナーで披露するだけに、より親密な曲として認識するようになった。アルバムとして聴いた時はそこまで目立たなくても、ライブだと「これ、最高!」って思ったりする曲もあるし、逆にライブには向いていないと悟った曲もあるし(笑)。例えば、私にとって「GASOLINE」はライブでものすごくスペシャルな瞬間を作り出す曲で、オーディエンスのリアクションも尋常じゃない。

トーマス:うん、「GASOLINE」をプレイしてたら、いきなり目の前にモッシュピットが出来上がったこともあった。ライブだとその場でオーディエンスからフィードバックが得られるし、インストゥルメンタルのパートになると僕らも自由に遊べるし。オーディエンスのクレイジーな反応を受けて相乗効果が生まれるよね。


「KOOL KIDS」披露時のステージ、2023年12月2日・有明アリーナにて(Photo by Fabio Germinario)

ー現在進行中の『RUSH! World Tour』はキャリア最大規模のアリーナ・ツアーですよね。あなたたちはあっという間にアリーナやスタジアムでプレイするようになりましたが、会場の大きさに動じることなく、自然体で大きな舞台を踏んでいるように見えます。ローマのストリートでライブ経験を重ねたことが、ブレない土台を築いたと言えますか?

ダミアーノ:それは間違いないね。バンドを結成した当時の僕らはストリートで、なんとかして人々の目を引きたいという一心でライブをやっていた。みんな僕らのパフォーマンスが見たくてそこにいるわけじゃなくて、たまたま道を歩いているわけだから。そういう意味で、僕らは今でも同じような意識でライブ・パフォーマンスに臨んでいるとも言える。つまり会場が大きくなってスペースが広がったら、その分だけ自分も動いてやるぞ、最大限に利用してやるぞっていうのが基本方針。これは僕らの場合、あらゆることに該当するんじゃないかな。環境の変化に無意識のうちに適応するっていうか。だから今の僕らのライブを形作っているもののうち、75%くらいはローマのストリートでのバスキングで培ったと言えるね。

トーマス:とはいえ、もちろんアリーナやスタジアムは小さなクラブとは全然違って、それぞれに違うエネルギーが生まれる。例えばクラブだとアンプのパワーが生々しく伝わってくるし、ヴェニューによってシナリオが変わってくるというだけなんだよ。


2023年12月2日・有明アリーナにて(Photo by Fabio Germinario)

Translated by Yuriko Banno, Post Production by Kenneth Pizzo @pizzok

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