史上最高のギタリスト250選

30位 ニール・ヤング / Neil Young

Richard McCaffrey/Michael Ochs Archives/Getty Images

ソロとして成功する以前のニール・ヤングは、ザ・スクワイヤーズやザ・マイナー・バーズ、さらにはバッファロー・スプリングフィールド、そしてクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングで、ギタースキルを磨いた。ソロアルバム『Harvest』がリリースされる頃までに、ヤングは、アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターの両方を巧みに操れるようになっていた。だから同じステージで、穏和なフォークソング「The Needle and the Damage Done」とワイルドなプロト・グランジの「Down by the River」といった、両方のタイプの楽曲を披露できた。「若いギタリストが参加するギターの上級者向けクラスで教えるとしたら、“Down by the River”のギターソロから冒頭の1分間を切り取って、最初の教材にする」と、トレイ・アナスタシオは言う。ヤングの有名なギターソロの中には、文字通り1つの音を繰り返すものもあるため、「原始的」と評価するギター純粋主義者もいた。しかしそういった評価は、ヤングの作品の本質を完全に見失っている。「ギタースケールの弾き方を知っていようがいまいが、関係ない」とヤングは1992年に語っている。「どんなに優れたテクニックを持っていても、人々の心は掴めない。問題は、音楽を通じて表現するフィーリングがあるかどうかが肝心なんだ。」




29位 エディ・ヘイゼル / Eddie Hazel

Michael Ochs Archives/Getty Images

今は亡きエディ・ヘイゼルを一躍ギターレジェンドにした「Maggot Brain」にフィーチャーされた10分間のギターソロは、ドラッグによるトリップ中に生まれたという伝説がある。レコーディング中に、ファンカデリックのバンドリーダーだったジョージ・クリントンがヘイゼルに向かって「母親の訃報を受けた瞬間を想像して、弾いてみろ」と指示し、さらに後半は「その後、実は母親は無事だった、という知らせを受けたと思って弾け」と言われて、ヘイゼルはギターソロを構成したという。「ヘイゼルは即座に、俺の言わんとしているところを理解したようだった」とクリントンは回顧録に書いている。「彼のギターから出るひとつひとつの音が、銀色に光る蜘蛛の糸のように広がっていくのが分かった。彼のギターソロを聴き返してみると、彼が音楽的才能溢れるギターの名手だったというだけでなく、ポップミュージック史上最もエモーショナルな瞬間に立ち会えたことを実感する」とクリントンは言う。Pファンクでのプレイやヘイゼル自身のソロワークには、グルーヴのパワーとサイケデリックな盛り上がりがスリリングにミックスされている。しかし、ネルス・クライン、J・マスキス、ウォーレン・ヘインズ、マイク・マクレディらヘイゼルのフォロワーが最もインスパイアされたのは、何と言っても「Maggot Brain」だ。彼らはそれぞれのライブで同曲をカバーし、才能豊かなエディ・ヘイゼルのスピリットを伝えている。




28位 デヴィッド・ギルモア / David Gilmour

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プロデューサー兼ソングライターとして活躍するピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアは、宙に漂う幻想的なテクスチャーを好む。ところが愛機である黒のストラトキャスターから繰り出されるギターソロは、感性が全く異なる。「リードギターのトーンは、ブライトかつパワフルで攻撃的な方がいい」とギルモアは言う。ブルーズをレパートリーとしないバンドの中で、彼のギターソロは熱情的なブルーズを感じさせる。彼の弾く、広がりのあるエレガントかつどこまでもメロディアスなギターソロは、『The Dark Side of the Moon』の中で突然鳴り出す目覚まし時計のように、心の準備が必要だ。同時にギルモアは、ピンク・フロイドの映像作品『Live at Pompeii』の頃には、アバンギャルドなインプロビゼーションを披露した。さらに「Have a Cigar」の高度なギターリフや、シックを彷彿させる「Another Brick in the Wall, Part 2」のように、突然ファンキーなリズムギタリストに変身したりすることもある。ギルモアは、ピンク・フロイドのオリジナルメンバーだったシド・バレットの影響で、エコーをはじめとするエフェクトにも精通するようになった。「Run Like Hell」にフィーチャーされた絶妙なディレイの使い方は、決してU2のジ・エッジの専売特許では無いのだ。





27位 バディ・ガイ / ​​Buddy Guy

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バディ・ガイを取り巻く人々は、彼のギターをただのノイズだと評価していた。彼はルイジアナの田舎にある実家で大騒ぎしたために、家族から追い出された。また、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、リトル・ウォルターらとのセッションでは、チェス・レコードを立ち上げたレナードとフィルのチェス兄弟に(ガイ曰く)「自分の思い通りにプレイさせてもらえなかった」という。しかしやがて新世代のロッカーが、ブルーズを再認識し始めた。するとガイのギタースタイルは、ジミ・ヘンドリックスやジミー・ペイジらロックギターの巨匠と呼ばれるギタリストたちに大きな影響を与えた。「Stone Crazy」や「First Time I Met the Blues」をはじめ、ハープ奏者の故ジュニア・ウェルズとのコラボ作品で特徴的な、音程を大きく上げるベンディング、大胆なディストーション、熱狂的なリックなど、ガイの華々しいプレイスタイルは、ギタリストたちの常識を変えた。ギターソロの途中で客席に降りて弾き続けるようなショーマンシップは、87歳になった現在も健在だ。2005年にガイは、ロックの殿堂入りしている。「僕にとってバディ・ガイは、エルヴィス・プレスリーのような存在だった」と、授賞式でエリック・クラプトンが述べた。「彼は、僕の目指すべき針路へと導いてくれる水先案内人だった」。




26位 セイント・ヴィンセント / St. Vincent

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セイント・ヴィンセントことアニー・クラークの作り出す複雑かつアトモスフェリックな音楽は、決してギター中心では無い。しかしギターに対する彼女のイノベーティブなアプローチは、深く印象に残る。バークリー音楽院で学んだ彼女は、ロバート・フリップ、エイドリアン・ブリュー、マーク・リーボウといったギターの名手から大きな影響を受けている。グラミー受賞歴のあるセイント・ヴィンセントは、自らに備わるギターの才能を楽曲の中で決してひけらかすことなく、ギターのトーンやカラー、ボイシング、ハーモニー、エフェクトの魅力を上手に引き出して重ね合わせている。「“私は誰よりも速く弾けるのよ”などという感じで、ギターでエゴを出したくない」と彼女は、プレミア・ギター誌のインタビュー(2011年)で語っている。「アスリートのような競争には興味が持てない。そこがアスリートとアーティストの違いかもしれない。音楽的に成立させつつ、人々を感動させられるのが理想的な妥協点ね」。




Translated by Smokva Tokyo

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