ミッキー吉野、70歳記念アルバムを本人とともに語る



田家:2004年の映画『スウィング・ガールズ』のサウンドトラック。東北の田舎の女子高生がビッグバンドを組んでジャズを演奏する青春映画で、音楽担当がミッキー吉野さん。アカデミー最優秀音楽賞を受賞されました。この曲で思い出されることはどういうことですか?

ミッキー:僕はバークレー行っていたからビッグバンドは慣れているのですが、ビッグバンドを主体にした映画のサントラを作るのは結構難しかったですね。やっぱり同じようなものを作らないで、劇伴の方はギター中心で楽器編成から何から変えていったんです。

田家:アコースティックギターで。

ミッキー:それからパーカッションだったり、でも昔のビーバップとかビッグバンドのジャズの雰囲気も残しつつ、新しくビッグバンドにならないように作りたいなと思って、結構苦労しましたね。このサントラは1番苦労したかも。

田家:知っているからこそ苦労する。

ミッキー:そうですね。あまり似たようなもの作ってもしょうがないじゃないですか。違うところで1つの音楽のラインができないと、サントラは1つのストーリーになると思って。

田家:ボストンのバークレーではいろいろな音楽のカテゴリも勉強していくんですか?

ミッキー:そうですね。僕は専門がアレンジと楽器だったんですけど、特に僕がいた頃はまだまだいい時代のバークレーですから、元デユークエリントンのメンバーとか、カウント・ベイシーとか、いろいろなバンド・メンバーが先生でいた頃なんです。

田家:へー、すごい(笑)!

ミッキー:だからちょっと変なロックっぽいピアノを弾いていると、「お前何やってんだよ」って急に言われちゃう。プライベートレッスンもあるけれど、練習室があるんです。急に誰かが見ているんですよ、それがもうデユーク・エリントンのリードトランペットだったり。19歳ぐらいだったから調子乗ってロック弾いているじゃないですか。そうすると、「What do you play men?」とか言われちゃって。

田家:彼らにとっては邪道なんですね。

ミッキー:そう、邪道。そういうのはいつの時代もあると思うんだけど、あの頃はそうですね。

田家:すごいな。いきなり正統のど真ん中で行っちゃったわけですもんね(笑)。

ミッキー:邪道で思い出したけどさっきの『西遊記』もそうで、バイオリンのストリングスセクションにスライドさせるのは邪道だったんですよ。クーン♪って「Monkey Magic」ではやってるじゃない? あれも邪道で、これもほとんど喧嘩状態というか。クラシックなのにこんなの弾かすのかみたいになって。こっちはギターのクーン♪を同じ弦楽器でやったらおもしろいなと思ってやっているんだけど。

田家:映画の中には「Take the ’A’ Train」とかジャズのスタンダードもあって、それもミッキーさんが選ばれて?

ミッキー:それは矢口監督が選んでいるんですけど、これもパロディと言えばパロディなんですよ。「Take a train ride」だから。そこらへんで遊んでいくしかないかなと思って。

田家:ミッキーさんはカーメイン・キャバレロの『愛情物語』でピアノを夢見るようになった6歳だったわけですもんね。

ミッキー:そう。あれは親に連れていかれて観て素晴らしかった。「トゥ・ラヴ・アゲイン」。

田家:そういうことを思いながらあらためて原曲をお聴きいただこうと思うのですが、これピアノじゃないんですよね。

ミッキー:全然違う(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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