小田和正が追求する音楽の普遍性、オフコース時代から現在までを辿る



田家:今日の6曲目です。2011年のアルバム『どーも』から「東京の空」。これは「クリスマスの約束」で初めて披露された曲でもあります。先週のゲストの木村史郎さんが選ばれたのがこのアルバム『どーも』の1曲目「君のこと」だったんですね。ギター1本で歌われていて、アルバムの最後がこの曲だった。ピアノだけで歌われる「東京の空」。この曲はライブで聴いていて、涙ぐんじゃった曲です。

2011年4月に発売になったアルバムが『どーも』です。「東京の空」がいつ書かれたのか、これは確かめたことがないので、震災の前だったかもしれないのですが、2011年、あの年の僕らの気分。テレビを観ながら、空を見上げて俺には何もすることができないな、無力だなと思って涙するしかない。そうやってニュースを観ていたのが2011年。そして、この3年間、2019、2020、2021。今年もそうか、僕らは関東、東京にいるわけですけども、東京にしかいられないでどこにも行けなくて、東京の空しか見ていられなくなって、上手くいかない人の方が周りにも多くて。頑張れと言っても何の力もないな。頑張れって言葉にそんな意味がないんじゃないかなって思ったりしている。その中でこの「東京の空」は上手くいかない人を歌っていた。今でもこの曲を聴くと、胸が熱くなりますね。頑張れとは言わないんだけれども、救われる歌。時の流れを超えたある種の諦観、達観の歌だと思うんですね。

新作アルバム『early summer 2022』は小田さんの中の風と空の道のアルバムと思ったのですが、「生まれ来る子供たちのために」に中にも空が出てきますし、この「東京の空」も空の歌ですし、今回の新作アルバムも空の歌がたくさんあります。小田さんの空ソングの傑作だと思っています。

小田さんのインタビューの中でいくつも忘れられない話があるんですけども、身の回りの環境のことがテーマになったことがあるんですね。つまり、環境のせいにしない。環境を変えることで何かを変えようと思っていない。仙台の下宿の話だったと思うんですけど、自分はそんなに立派なところに住んでいなくて、友だちの中にはすごくいいところに住んでいる人もいた。でも、そういうことを羨んだり、自分もそういうところに行こうとしない。人間関係も含めて何か不満があったとしても、そこで何かをできるか考えるんだ。自分の責任。いろいろなことを自分の問題として受け止める。あ、それが小田さんなんだと思ったことがありました。そういう人が歌った上手くいかないときの歌がこの歌です。

Rolling Stone Japan 編集部

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