大江千里は何と戦ってきたのか? ポップミュージックについて語る

同級生 / 大江千里

田家:今日の6曲目、93年7月に発売になった「同級生」。これは10周年のシングルとして発売されて、両A面で「軍配はどっちにあがる」と一緒に発売されたと。

大江:ポップミュージックってやっぱ難しいんだなぁっていうのを今感じますね。この曲は精度もディテールも初期に比べて非常に磨きがかかっているんだけど、そういうことだけじゃない。ポップミュージックの残酷さだよなと。ポップミュージックって世界一複雑に入り込んでて、色んな音楽の要素が潰されて、その欠片がいっぱい合わさっている。そのキラキラっていう感じがポップだと思うんですけど作るのはやっぱ難しいですよね。

田家:「同級生」はいわゆる同級生ソングという意味では本当によく出来てる曲でしょう。

大江:俯瞰で話をすると、精度は10年色々やってきた人が書いてる感じはするんだけど。「好っきやねん!」っていうピタッとくる感じからすると若干斜がかかっているというか、作り込んでいるなって感じがあって。

田家:衝動的な何かみたいなものですかね。

大江:そうそう。「ああ! もう漏れるわ!!」みたいな(笑)。そういう「バコッ!」て入ってくるインパクトが少し足りないなって。好きですけどね。フォローするわけじゃないけどこの曲を書いた時のことも覚えてるし、大サビで広がっていくメロディとか、よくこんなアイデアがあったなって思うんだけど、「そういうこっちゃないねんで」っていうのもあって。やっぱポップミュージックっていうのはほんとに大変な音楽ですよね。さっきも旬って言ったけど、自分に光が当たっているのは分かるけど影の長さが見えないんですよね。影が長くなってるから「俺は旬じゃないんだ。今は夕方なんだ」ってことに気づいて、早く横に行かなきゃ駄目だよって。でも夜が暮れてもまだそこにいるみたいな、その感じがちょっと見え隠れしますね。

田家:なるほど。今月は千里さんに曲順を決めて頂いてお送りしてるわけですが、今の話をしたいがために、このDisc3の2曲目と1曲目が最後になってるんでしょうね。今日最後の曲はDisc 3の1曲目です。「同級生」の両A面シングル「軍配はどっちにあがる」。

Rolling Stone Japan 編集部

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