グライムスが明かす、自身の素顔と超越したヴィジョン「カオスこそが私のブランド」

イーロン・マスクとの交際がもたらしたもの

「Idoru」は堂々たるラブソングであり、その熱い想いは今も薄れていないが、実は同曲はマスク以前の元カレについて歌ったものだ。一方で「So Heavy I Fell Through the Earth」は、現在の彼女の心情を明確に反映している。「妊娠についての曲なの」彼女はそう話す。「妊娠は素晴らしいことだけど、悲劇的な側面もあると思う。女性にとってそれは、自分の肉体と自由を犠牲にするものだから。その代償は計り知れないし、それを経験するのは人口の半分を占める女性だけ。だから私にとって……」同室にいる弟の耳を気にして、彼女は声を潜めてこう続けた。「避妊なしのセックスっていうのは、ものすごく覚悟のいることだったの。妊娠している今、私は自分の力を犠牲にしてる。降参したと言ってもいい。これまでずっと、私はこういう状況を避けることを強く意識してきた。何かのために自分を犠牲にするなんて絶対に嫌だった私にとって、それは途方もない努力を要することだったの」

彼女がその努力を惜しまなかった理由はただひとつだ。「私は彼のことを、本当に心から愛しているの」彼女はそう話す。「だから迷いは少しもなかった」また彼女はマスクと出会ったことで、10代の頃のトラウマを乗り越えられると感じていた。「彼は私に馬鹿げた考えを放棄させるのがすごく上手いの」彼女はそう話す。「彼と出会って、私は以前よりも自分の内面をコントロールできるようになった」


Photographed and directed by Charlotte Rutherford for Rolling Stone

彼女は2018年にアジーリア・バンクスのアルバム制作に参加する予定だったが、それは精神的に成長した彼女を試すかのような騒動に発展した。バンクスがマスクの所有する家のひとつでcの帰宅を待っていた時のことを片っ端からInstagramに投稿したことをきっかけに、マスクはSECから提訴されてしまう。cはそのことについて多くを語ろうとせず、ただこう言った。「悲しくて陰鬱な出来事だった。彼女を許すことにしたけど、それはすごく難しいことだった」。その出来事に、彼女はひどく取り乱したという。「気が狂いそうになってた」彼女はそう話す。「私のせいで、自分が大切にしているものや人々が悲惨な状況に追い込まれてしまったって、自分を責めずにはいられなかった」。彼女をなだめようと目の前で指を鳴らしたマスクの動きを真似て、cはこう話す。「彼にこう言われたの。『しっかりしろ。君はこれから戦わなきゃいけないんだぞ』」

出産を控えた彼女が、世界で最もリッチで影響力のある人物の1人のパートナーとして、今後さらに世間の注目を浴びることは間違いない。「カオスに進んで身を投じた、クレイジーなインディミュージシャンってわけ」彼女はそう話す。「クレイジーな仲間たちとどんなにクレイジーなことをしても、前はバッシングなんてなかったんだけどね」

Translated by Masaaki Yoshida

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