ウガンダ発、独裁政権と対峙する音楽コミュニティの力

「ピープル・パワー」をスローガンに掲げて活動するボビ・ワイン(Photo by Isaac Kasamani/AFP/Getty Images)



「たとえイエス・キリストが立候補しても、ムセベニに負けるだろう」

ムセベニはまた、自分が欧米諸国にとって必要不可欠な存在であるかのように見せる努力を続けてきた。彼は、東アフリカ全体と周辺におけるテロ対策の信頼できるパートナーとしての地位を築いてきた。ウガンダの軍隊はジョージ・W・ブッシュの「有志連合」に参加し、イラク、アフガニスタン、ソマリアにおける対テロ作戦や平和維持活動に派遣された。米国はムセベニ政権に対し、開発と安全保障の支援名目で毎年約10億ドル(約1100億円)を拠出している。

ムセベニはさらに欧米諸国に気に入られようと、ヨーロッパのほとんどの国で受け入れを拒否されたアフリカ各地の難民に対して国境を開いた。2018年後半時点でウガンダ国内には約150万人の難民が居留していて、同国は2018年だけで2億ドル(約215億円)の人道支援の資金を得ている。おかげで、ムセベニの人権に関する過去の酷い歴史が覆い隠されることとなった。

ワインは、テロ対策がウガンダの最重要課題だと主張する。しかし「テロ対策における我々のパートナーは、ムセベニ個人のパートナーではない。ウガンダのパートナーであるべきだ。同盟国は個人ではなく、組織のパートナーでなければならない」とワインは言う。ワインは、自分の政治的信条はポピュリストだと公言している。彼はかつて、ウガンダの悪名高き反ホモセクシャル法を支持していたが、その後立場を翻した。2014年に成立した同法は、国際的な批判の声が高まる中で違憲と判断された。しかし彼はデマゴーグではない。ワインは、大統領の年齢と在職期間の制限を復活させることを公約にしている。さらに彼は、もしも大統領になったら、状況次第ではムセベニに恩赦を与えたいとしている。「大統領が退任後に亡命生活を余儀なくされるという悪循環を終わらせたいんだ」とワインは言う。

ワインかムセベニか他の大統領候補の誰が優勢か、という信頼できる世論調査結果は今のところ存在しない。ワインが集める観衆の数を見れば、彼がどれほど幅広く支持されているかがわかると言う者もいる。一方で、投票所へ行った経験もない若いファンを投票に駆り出すノウハウをワインが持っているかを疑問視する声もある。少々大げさな数字ではあるが、公正な選挙が行われれば80〜90%の票を勝ち取る自信がある、とワインは言った。人口の大半を占める地方では依然としてムセベニが強い、というのが一般的な見方だ。ただしどの予想も単なる推測の域を出ない。

大統領選が自由かつ公正に行われることはないだろう。過去の選挙では、票の水増し、買収、脅迫が日常茶飯事だった。そして2021年の選挙も同様だろうとする声が大半を占める。「現状では誰もムセベニには勝てないと思う」とカリナキは言う。「国に対抗して人を集めるのはとても困難だ。たとえイエス・キリストが立候補しても、ムセベニに負けるだろう」

ワインが選挙で勝ったとしても、ムセベニが喜んで身を引くだろうなどという考えは、空想に過ぎない。ワイン自身ですらそう思っている。「もちろんすんなり行くとは思わない。ムセベニは何でも私物化しているから、彼自身が国家であり、ウガンダとムセベニは一心同体だと皆が感じている」とワインは言う。「ムセベニは政治的自由を圧迫しようと一所懸命で、政敵の命さえ奪いかねない。しかし我々の勝利が確実なら、彼は出て行くしか道はないだろう。ウガンダ国民は『いい加減にしろ!』と叫びながら、ムセベニに対抗して立ち上がるだろう」

Translated by Smokva Tokyo

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