松本隆の作品に通底しているもの、トリビュートアルバムを本人と振り返る



田家:再び「夏色のおもいで」の原曲をお聞きいただいております。このトリビュートアルバム『風街に連れてって!』は最後の11曲目が「風に集めて」、1曲目が「夏色のおもいで」で、バンドの金字塔で終わって、作詞家としての最初のヒットに戻っていくという流れなのかなと思います。しかも風つながりですよね。

松本:最後の曲で風をあつめて、その風に乗って君をさらいに行く無限ループに入りますね。

田家:「風をあつめて」が収録されている『風街ろまん』は1971年11月20日発売でした。

松本:真夏に録音してて、冬に出たって感じですね。

田家:まさに50周年です。曲も残っていますし、本人もお元気です(笑)。さっきお話に出たブックレットには、松本さんがお書きになった詞2100曲の全曲リストが載っていました。あれをご覧になってどう思いますか?

松本:見てないんですよ。クラクラするから(笑)。

田家:覚えてない曲も当然おありなんでしょうけど(笑)。この50年を言葉に例えるとしたら、栄光の軌跡、葛藤の証、苦闘の歴史とか、色々ありそうですが。

松本:なんにもないですよ、大変だったなとは思うけど(笑)。

田家:シンガー・ソングライターが書く言葉って、作り手がどこかでずっとついてまわるような気がするんです。でも作詞家、松本さんがお書きになったのは、本人を離れて歌い手のものになって、しかも歌い手も超えているんじゃないかと。

松本:そこからだんだん戻ってきてますね。歌い手に100あげたんですけど、7割くらいは帰ってくるようなブーメラン現象がありますね。

田家:全部僕の言葉なんだと思われますか。

松本:30周年で『風街図鑑』を作った時に、はっぴいえんども松田聖子も同じだと言ったら、やはりスタッフはそう思わないわけ。じゃあバラバラにして並べてみようということであの曲順になったんだけど。『風街図鑑』の後はどの曲も全部通底しているんだとみんなが納得したみたいで。それは実際に証明しないと皆わかってくれないみたい。

田家:それではアルバム1曲目をお聞きください。吉岡聖恵さんで「夏色のおもいで」。

Rolling Stone Japan 編集部

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