米団体指導者、女性信奉者の尊厳を蹂躙 性的行為も【長文ルポ】

隠れ家での共同生活、その実態

旅の間、フェルハイエンさんは「意気揚々」としていた。マッサロがステージ上で魅せるカリスマ性や、「休憩中に信奉者が近づかないよう屋内でもサングラスを外さない」といったエキセントリックなところにたちまち惹かれた。信奉者といる時の彼は、よそよそしい態度と愛情深さを使い分け、相手の眼をしっかり見つめて温かく抱擁した。代わりに信奉者は彼の一言一言を噛み締めた。最近彼女は当時友人に宛てたメールを読み返したが、あるメッセージが目に留まった。「メールには『すごく幸せよ、ようやく見つけたこの人は指導者らしいところがなくて、胸の奥に眠る自分とつながるよう導いてくれるの』と書いてありました」と本人。「しかるべき人物を見つけた、と本気で信じこんでいたんです」

最初から怪しい点はいくつもあったが、当時はそうとは気づかなかった、とマッサロの元信奉者はローリングストーン誌に語った。第一に、マッサロは天気を操ることができるとか、イエス・キリストよりも精神的に進化しているとか、彼自身の能力についておかしな主張をする傾向があった。2018年のInstagramの動画では、手を触れずにアルミ箔を動かしてテレキネシス能力を披露している(#telekinesisというハッシュタグ付き)。

自分がキリストやブッダよりも精神的に進化していると思うか、という質問に対してマッサロは反論し、両人とも「おそらく自分より精神的に進化していただろう」と述べた。だが天気をコントロールできるという主張を繰り返し、「農場を営む友人からの要望で、高い確率で雨を降らせたり止めたりした」と言った。「個々の考え次第だが、私は真実だと確信するに足る十分な証拠を目にしている」(Viceのドキュメンタリーでは、リクエスト通り天気を変えるよう要求されたが、できなかった)。

元弟子いわく、マッサロは互いの欠点や不安を指摘し合う「曲解分析」への参加を促していた。これについてはマッサロ本人も認めており、「互いを通じて内省する」よう勧め、「切磋琢磨と有益なコミュニケーションを促すことがねらい」だと言っている。だがこうした分析には精神虐待的な一面もあった、と匿名希望の元メンバーは言う。「ちょっとしたゲームのようでした」とその女性は言う。「時には非常に手厳しいこともありました。彼はそんな時、『だが愛ゆえにこうしているのだ』と言いました。ある意味ズタズタにされます」 彼女も、こうした分析により過去の性的・精神的トラウマを呼び起こされて、大勢の人が泣き崩れる姿を目にしたという。

アレクトラさんがキトの隠れ家でマッサロと生活していた時、メンバーの1人がグループセッションで自身の性的トラウマについて語ったそうだ。マッサロは「興奮して」、2階に上がって今の話を再現するようアレクトラさんに指示したそうだ。その後階下に降りていくと、マッサロはそのメンバーにどうだったか尋ね、過去の出来事から完全に立ち直ったかどうか知ろうとした。「彼は(強制的に)胸の奥にしまってあるトラウマを引き出させようとしました。そうやって人々の首根っこを押さえて、彼に口答えさせまいとしたんです」(マッサロは「誰にも性的な場面を再現させたことはない」と言っているが、「対話の中でそうした話題になった場合、それを再現するかという選択は本人次第だ」とも付け加えた)

またマッサロは、信奉者に友人や家族とのつながりを断ち切るよう促した。強制的組織の研究者によれば、これは共通の危険信号だ。「人間関係などくそくらえ。両親とも、家族とも、友人とも、周りの人間とも、私とも、人間関係はすべて忘れろ」と、2017年の講義でも語っている。「何の意味も持たない。無意味だ……家族に煩わされるな。我が子に煩わされるな。両親やパートナーなど気にするな」

Translated by Akiko Kato

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