米団体指導者、女性信奉者の尊厳を蹂躙 性的行為も【長文ルポ】

Photographs in illustration by Keilan McNeil



信者の死

2017年末、ビー・スコフィールド氏はマッサロに関する記事をMediumに公開した。スピリチュアル界の非主流派を専門とするジャーナリストだった彼女は、占星術師の助言に従ってセドナで暮らしていた。そしてたちまちマッサロの懐に入っていた。彼の教えに感銘を受けることはなかったが――「ニューエイジ的な戯言だと思っていました」――トリンフィニティ・アカデミーの言葉巧みなオンライン講座には感心したそしてグラフィックデザイナーとしてのスキルを活かし、Shakti Hunterという偽名でグループ内に潜入した。

最終的に公表された彼女の暴露記事には、多重恋愛やジュース断食、イエス・キリストと自分を比較するマッサロの姿が事細かく記されていた。題して『IT時代の指導者:ベンチーニョ・マッサロ率いるセドナのカルト集団の内幕(Tech Bro Guru: Inside the Sedona Cult of Bentinho Massaro)』。この時初めてマッサロやトリンフィニティに「カルト」という言葉が公に使われ、コミュニティ内に衝撃が走った。「『こうした集団は私たちを惹きつけ、邪悪な力や存在が襲ってくるので地球を覚醒させなければ、という壮大な使命を広めようとしている』という内容でした」とソレンセンさん。「今になって思えば、ずいぶん奇妙でSFチックですね」

だがスコフィールド氏の記事は、2018年12月9日の事件ほど影響力は及ぼさなかったようだ。この日セドナの峡谷で、ブレント・ウィルキンスさんの遺体が発見された。34歳のウィルキンスさんはコミュニティ内でも知られた存在で、長年マッサロの取り巻きの1人だった。少年らしさの残る端正な顔立ちをした全米大学テニスの元選手は、長年鬱に悩まされていた。ソレンセンさんの話によれば、彼は精神病院に入院後、すぐにマッサロを追いかけてセドナへ向かったという。精神疾患がとくにひどくなったのは最近のことだったとフェルハイヘンさんも言う。彼女は2017年のセッションでウィルキンスさんを指導し、精神の声を読み解く手ほどきをしていた。「彼はたくさんの疑問を抱えていました」と彼女は言う。「答えを求めていましたが、入れ込み過ぎていて、疑念も抱えていました」

ウィルキンスさんの死後に彼の両親がセドナ警察と交わした電話の内容によると、マッサロの教えに従うことに悩んでいたことが息子の死に直接関係している、というのが両親の考えだった。「息子はカルトのメンバーです」と母親は言い、ノースカロライナ州アッシュヴィルにあるマッサロの隠れ家に行ったウィルキンスさんが「全く別人になって帰ってきた」と父親も付け加えた。ウィルキンスさんはセドナ実験と呼ばれる隠れ家にも出入りしていて、峡谷で発見された遺体も入館パスを身に着けていた。

地元警察は遺体発見後すぐにマッサロを尋問した。なかでも警察の関心を引いたのが、ウィルキンスさんの死亡直前に別の隠れ家でマッサロが行った講義だった。この中でマッサロは、教義を信じない者や信念に疑問を持つ者に、自ら命を絶つよう促していたようだ。「重要なことに目を開け」と、彼は動画の中でも言っている。「さもなくば自殺せよ」(マッサロはウィルキンスさんの死で起訴されていない。当時の状況に詳しい複数の信奉者やアリゾナレパブリック紙の調査によれば、警察はウィルキンスさんが自殺したと断定した)

ウィルキンスさんの死、とりわけ訃報に対するマッサロの反応はコミュニティを動揺させた。マッサロはウィルキンスさんの訃報から2日後にFacebookに追悼声明を投稿したが、元信奉者の1人セリーヌ・ブランさんも言うように、コミュニティのメンバー数人は彼が「思いやりに欠け、冷淡」そうに見えた、と首をかしげた。ウィルキンスさんと親しかったソレンセンさんはマッサロを直接非難こそしていないが、その後の彼の対応や、発言の責任を取りたがらないそぶりを疑問視している。「彼は謝罪しませんでした」と彼女は言う。「『非常に残念です。私が意図したメッセージとは全く違います』とも言いませんでした。そうした悔恨の気持ちは全くありませんでした」

ウィルキンスさんの死について問いただすと、マッサロはこう答えた。「ブレントのことは大好きだった。彼の自殺は我々にとって、非常に不幸な、痛ましい、衝撃的な出来事だった。こうなることがわかっていたら、最善を尽くして手を貸すなり、プロの助けを借りるよう伝えていたのだが」。使命への信仰を失った信奉者に「自殺」をほのめかしたことについては謝罪せず、あの発言は何年も昔のもので、文脈からまったく外れていると主張した。

Translated by Akiko Kato

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