moonridersの多面体と多様性、鈴木慶一の自薦曲で1984年から1996年を辿る



田家:詞が慶一さんで曲が岡田さんです。

鈴木:さっきかけた「M.I.J.」も曲は岡田くんですね。この頃は岡田くんのテクノロジーに対する追求がとても素晴らしくて。言ってみればポストパンク、ポストニューウェーブで出てきたグループがたくさんいる中で、どこかファンクなんだけど非常にイギリス人らしい感じ、そういったものにみんな夢中になるんです。xiangyuさんが出演している映画の撮影がありまして、『ほとぼりメルトサウンズ』という映画なんですけど、内容がこの曲の歌詞にそっくりなんです。非常に驚きました。監督も見てないし、スタッフも誰も知らないんです。所謂ホームレスの話なんですが、xiangyuさんが実家に戻ると庭に住んでいる。日々テープレコーダーで街の音を録音している。そのカセットテープを土に埋める。まさにこの歌詞。驚いた。で、このときは1人2曲ずつという非常に公平なスタイルで作ったんですね。各自が既にプロデューサーだったり、アレンジャーだったり、活躍している最中なので、ただし誰々の曲をやるときに誰か常にいましょうってことで、私がいることになった。これってつらいんです。いるんだけど、打ち込みをどんどんコンピューターで作っていくのを見てて、出来上がりに悪いところがないんです。「こうしたらどう?」って言うところもない。ってことはいなくてもいいんじゃないかと、でもいなくちゃいけないという決め事を作ってしまった。そしてだんだん具合が悪くなってくる。そんな中でかしぶち君の曲を録音している時に表に出て、ノートブックに思いついた歌詞をバーッと書いたんです。これが「夢が見れる機械が欲しい」で。要するに小説のようなことを書いたんですね。それを岡田くんの曲にぴったりハマるように、歌詞として書いていく。最初に物語ができていたんです。だから、ちょっと精神的に病んでいく兆しのある感じだとは思いますよ(笑)。

田家:動物にちなんだ曲が多いのは結果的にそうなったんですか?

鈴木:私がこのアルバムは動物を扱ってみようと。必ずタイトルに動物を入れるか、もしくは歌詞の中で入れていこうというのがあったと思います。ただし、タイトルが『ANIMAL INDEX』と決まるまでにサンマから始まって、8時間かかったんですよ。

田家:はーすごいなー、サンマですか(笑)。

鈴木:もう動物なのか、魚なのか分からない。一応ね、動物、サンマから始まった。

田家:そこまで時間かけないと、物事が決まらないという。

鈴木:この頃は物事を決める、アレンジを決めるにおいても時間かかりました。

田家:なるほどね。その中心にいらした。でも、やることがなかった。

鈴木:それは精神を病みます。仕事をしている、その曲に携わっている人は一生懸命やっているから大丈夫なんですよ。

田家:このアルバムはキャニオン・レコードから発売になったわけで、鈴木慶一さん34歳、博文さん31歳、全員が30代になった。

鈴木:そうですね。だから「30」って曲が入っているんですね。TENTっていうレーベルを高橋幸宏と作ったんです、そこから出そうということですね。

田家:この後に出た1986年のアルバムタイトル曲からお聴きいただきます。「DON’T TRUST ANYONE OVER 30」。

Rolling Stone Japan 編集部

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