moonridersの多面体と多様性、鈴木慶一の自薦曲で1984年から1996年を辿る



田家:30以上を信じるな。長髪だった僕らの精神的な拠り所でもありましたが、曲名にはANYONEが入りました。

鈴木:はい。要するに『DON’T TRUST OVER THIRTY』ですよ。若いとき、本当にそうでしたよね。30過ぎは全く信用してなかった。

田家:そう(笑)。

鈴木:友人も全員20代だったり、10代だったりで。そういうような時代を過ごしてきて、自分らが30を超えてしまったわけだ。

田家:大問題でしたよね。

鈴木:超えたときの衝撃たるやすごかったですよ。あー、あの30を超えた、どうしたらいいんだろう。大体20代後半に30代の生き方が決まる。30代の生き方が決まって、30代はわりと和やかにいけるはずなんだけど、音楽の世界ではなかなかそうもいかなかった。1970年に音楽を始めたとき、おふくろが「あなた10年経たないと、食べられるようにならないよ」って言ったんです。たしかに30ぐらいになると、ちょっと食べられるようになった。そうではあるんだけど、それに伴う不毛感というか、虚無感、そういったもの。30超えてしまって、若くないなと。ニューウェーブをやったときにお客さんから「ジジイ帰れ」と言われるし(笑)。所謂逆説的、もしくは自虐的な言い方のDON’T TRUST OVER THIRTY。

田家:俺たちがもう30超えているんだから。

鈴木:ええ。曲は全員で作ったんですけど、歌詞は鈴木博文で。

田家:作曲がE・D MORRISONっていう(笑)。

鈴木:E・D MORRISONはアナグラムですね。moonridersのアナグラムでE・D MORRISONとなる。

田家:文字を入れ替えて、新しい言葉を作る、言葉遊び。

鈴木:一昨日から昨日、今日にかけての3日間でこんなにひどい男はいないでしょ(笑)。

田家:家庭人失格(笑)。

鈴木:そう、家庭崩壊の歌です。

田家:こんな男を信じちゃいけないよと。

鈴木:いけないよで、DON’T TRUST OVER THIRTY。30過ぎになったら、こういうことをしてしまうときもあるよってことなんでしょうねー。

田家:この『DON’T TRUST OVER THIRTY』の後に活動休止になるわけですね。

鈴木:言ってみれば1986年は10周年なんです。このときにいろいろなことをやりすぎた。

田家:ライブアルバムも出ました。『THE WORST OF MOONRIDERS』。WORSTっていうタイトルをつけるのも、moonridersらしいなと思いましたけどね。

鈴木:これはジェファーソン・エアプレインのパクリです。それと、ツアーが多かった。ビデオも作った。12インチシングルも作った。ライブを長時間、何時間やれるか試してみようで、3時間超えなんですよ。楽屋に行くと、アンコールやりたくないな……もうくたびれ果てて。でも行くんですね。

田家:そういうDON’T TRUST OVER THIRTYだった。で、再開が1991年になるわけで、そのアルバムからお聴きいただきます。

Rolling Stone Japan 編集部

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