チャンネル登録者数1億人、世界一稼ぐYouTuber「MrBeast」の正体

誰かを助けるのは楽しいし、素晴らしいこと

タイソンは、職場でのこうしたトラブルは、ドナルドソンのコミュニケーション力不足によるものだと考える。「ジミーは、自分が何を求めているかはっきりわかっている。でも、コミュニケーションはあまり得意じゃないと思う」と話す。「これについては、話し合ったこともある。自分が求めているものや必要なものを誰かに伝えるのが苦手なんだ」。その一方で、ターナーさんはドナルドソンが与えた嫌な印象を忘れることができないと言う。「動画の中のジミーはすごくクールだ。でも、実際会ってみると『動画のクールなジミーが本当の姿だったらいいのに』とがっかりした」


ノースカロライナ州のMrBeast YouTube LLCでは、現金がすべてを支配している。
PHOTOGRAPH BY MATTHIAS CLAMER FOR ROLLING STONE. TOP AND SHORTS BY BUCK MASON

新興慈善家としての活動は、非の打ちどころがない人物としてのドナルドソンのイメージづくりに一役買っている。ここ数年のうちに、ドナルドソンはクリックを誘うバラエティ系動画から慈善活動寄りの動画へとシフトした。MrBeast Philanthropyという会社を立ち上げるかたわら、植樹を専門とする非営利団体のアーバーデイ財団とタッグを組んだ#TeamTreesや#TeamSeasといったプロジェクトも話題を呼んでいる。MrBeast Philanthropyの最高経営責任者(CEO)を務めるダーレン・マーゴリアスさんは、週に一度のフードドライブやYouTubeグッズから調達した衣類などの配給を行なっている。

2000万本の木を植えることで地球温暖化を食い止めることができるのか?という議論はさておき、懐疑派はこうした活動が一種の「グリーンウォッシュ」として法人の寄付者に悪用されることを懸念する。それに対してアーバーデイ財団のダン・ランベCEOは、#TeamTreesが発信しているメッセージの重要性を強調した。「たしかに、木を2000万本植えることで地球温暖化問題が解決できるわけではありません」と認める。「それでも、植樹の重要性とメリットを人々に発信することはきわめて重要です」。ランベCEOは、#TeamTreesのおかげで、現在までに1400万本の植樹が完了していると語る。年末までには目標の2000万本も達成できそうだ。

ドナルドソンは、慈善活動に積極的に参加する子供ではなかった。ボランティア活動や教会のコミュニティサービスに加わったこともないとスーさんは話す。本人も、こうした博愛主義に対して強い思い入れがあるわけではないと主張する。それでも、MrBeast PhilanthropyのCEOであるマーゴリアスさんは、最初のブランド契約の収入をホームレスの人に贈った経験が「彼の心に火を灯し」、財力と影響力を活かして世界を変えたいという想いにつながったと話す。ドナルドソンは、多彩な慈善活動を行うことで次の世代の子供たちに見返りを求めず与えることの素晴らしさを知ってほしいと願っている、とマーゴリアスさんは言う(ドナルドソン曰く、12歳未満の視聴者はYouTubeアナリティクスの対象外だと言われているが、彼の動画の視聴者はかなり若い年齢層で構成されている)。「私たちの多くは、見返りを求めずに金銭を寄付することは負担ないし犠牲だと感じています」とマーゴリアスさんは言う。マーゴリアスさんは、50代前半のがっちりした体格の誠実な紳士。「でも、誰かを助けるのは楽しいし素晴らしいことだと気づいてもらうことで、与えることのイメージを変えられるのです」

マーゴリアスさんは、カメラが回っていない場所でドナルドソンが気前の良さを発揮することを知っている。大枚を叩いてハリケーンで家族を失った子供たちのためにクリスマスプレゼントを買ったり、パンデミックで仕事を失った9人家族のために家を借りて家具を揃えたりと、例をあげるときりがない。「初めてジミーに会った夜、彼は私に『僕の目的は世界をよくすること』だと言いました。ジミーは心からそう思っていると私は信じています」とマーゴリアスさんは話す。「『再生回数を伸ばすためにやっている』という人のために言っておきますが、私たちは人知れず、驚くほど寛大なことをしているんです。それも100%ジミーのポケットマネーで」

Translated by Akiko Kato

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