チャンネル登録者数1億人、世界一稼ぐYouTuber「MrBeast」の正体

「大事なのは、根気強くこつこつ努力して、やめないこと」

慈善活動の動機について尋ねると、ドナルドソンは神経質な反応を見せた。「僕は自分が何者かわかっているし、それを誰かに証明する必要がないこともわかっている。いままでの行為が僕という人間について語っていると思う」と話す。「目玉が飛び出るほどの額を注いで立ち上げた非営利チャンネルは、今後収益をあげることはないだろう。(中略)僕は、毎月万単位のカネと何十もの時間をロスってるんだ。でも、これらは何万ドルもの収益をあげるプロジェクトにつながる可能性をはらんでいる。だから、僕は気にしない。公の場ではこういうことは言わないんだ。それが動機じゃないからね」

ドナルドソンのもとには、動画を観た子供たちがビーチでゴミ拾いをしたり、炊き出しに参加したりするようになったという親たちからの感謝の言葉が絶えない。私が取材したMrBeastファンの親たちの多くは、子供に促されて#TeamSeasや#TeamTreesに寄付したと話す。それでも、MrBeastの動画は慈善の皮肉な側面を提示するのでは?という私の質問は、彼の痛いところを突いたようだ。「あなたの言うことは、懸念でさえない」とドナルドソンは言う。「多くの子供たちがいいことをして動画をつくっているわけじゃない。単純に、多くの子供たちがいいことをしているだけなんだから」

実業家の多くがそうであるように、ドナルドソンにはプライベートというものがほとんどない。少なくとも、プライベートな側面を見せることにはまったく興味がないようだ。ドナルドソンは先日、ライフスタイルインフルエンサーのマディ・スピデルと別れた。スピデルは、ドナルドソンのいくつかの動画にも出演している。スピデルはドナルドソンにいい影響を与えたと彼の周りの人々は言う。スピデルのおかげで、ワークライフバランスをもっと大切にするようになったと。ドナルドソンは、スピデルのプライバシーに配慮して別れの理由を語らない。だがタイソンは、仕事一筋の生活が大きな原因ではないかと考える。「次は、ジミーと同じくらいビジネスやカネといったものに執着する相手を探すだろうね」

当の本人は、デートよりもMrBeastを成長させることに興味があるようだ。チャンネル登録者数1億人突破、MrBeast Burgerの新店オープン、YouTube史上もっとも成功したYouTuberになることなど、夢は尽きない。メインストリームのエンターテインメント会社に認められることを渇望する多くのクリエイターと違い、ドナルドソンはNetflixとの契約を取り付けたり、高額のレコード契約を結んだりすることには無関心だ。自分を有名にしてくれたYouTubeでの影響力を高めること、彼の関心はこれに尽きる。

「YouTube史上もっとも有名なYouTuberになりたい」とドナルドソンは話す。「自尊心を満足させるためじゃない。理由はわからないけど、とにかくなりたい。そう思うことでがんばれるんだ。毎朝ベッドから出て、こつこつ努力するモチベーションになる。でもこれは、単なる虚栄心の問題かもしれない」

異常なほどYouTubeにこだわる人物としては意外なことに、YouTubeで動画はあまり観なくなったとドナルドソンは話す。動画を観る代わりに、いまは“自己最適化”なるものに夢中だ。モチベーションを上げるためのツールとして、キッチンの真ん中にジムを設置した。お菓子に手を出すのではなく、ワークアウトできるように。成功者の伝記も毎日読む。ちょうどマイケル・ジョーダンの伝記を読み終えたばかりだ。ドナルドソンのライフコーチは、成功者は40歳でピークを迎えると言う。

「それを聞いた時は、『そんなわけねーだろ』って思った」とドナルドソンは言う。「でも、いまはそうだと思う。健康な体をキープして、皺だらけにならなければ。あとは、カネとかそういうものを持っていれば」。ライフコーチの言うことが本当なら、ドナルドソンのピークはまだ10年先。それに向かって邁進することだろう。自社スタジオが完成したあかつきには、事務所にシャワールームを設置すると言う。そうすれば、自宅に帰らなくてもいい。「大事なのは、根気強くこつこつ努力して、やめないこと」と話す。「飛躍的な成長の真っただ中で停滞するのは嫌だ」

ドナルドソンがYouTubeで5番目に人気のユーチューバーになることができたのは、仕事に対するこうした態度のおかげだ。それでも、ドナルドソンは満足していない。ねらうのは1位だ。広々とした新しいスタジオ、ぶっ飛んだ舞台装置、考え抜かれたバラエティ動画、本物のサメ、ライムグリーン色のランボルギーニ、100万ドルの現ナマ、銀行に蓄えられているその何倍もの額……すべてはそのためにあるのだから。ドナルドソンには、それでもまだ足りないかもしれない。「YouTubeが僕のすべてなんだ」と、モデルXの座席に座りながら言う。「僕はパーティーもしないし、友達もほとんどいない。それにリスクだってある。50歳になって人生を振り返った時に『しまった! YouTube以外のことは何もしてこなかった』って後悔しないとも限らないから」

from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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