5位「Bad」★

「痛みを伴う問題をテーマにした説得力のある曲だ」とボノは書いている。80年代初めのダブリンは不況による機能不全状態で、薬物乱用者が急増していた。歌詞は、問題に苦しむ個人的な知り合いの経験に基づいている。「責任感のある人々に対しては、常に敬意を抱いている。しかし同時に、無責任な人々にも共感する。僕にも、投げ出して逃げてしまいたいという面があるからな」とボノは言う。ゆったりとしたヴェルヴェット・アンダーグラウンド調の「Bad」は、わずか3テイクしかレコーディングしなかった。ブライアン・イーノがキーボードを追加し、最低限のオーバーダブを施したのみで仕上げた。ところが「Bad」は、ライブで盛り上がる曲として人気が出た。ラジオDJたちはスタジオバージョンよりも、1985年のライブEP『Wide Awake in America』の方を好んで選択した。また、ライブエイド(1985年)における12分間のパフォーマンスは、フェスティバルの最も記憶に残るステージだった(ボノはオーディエンスの中からファンの女性をステージへ引き上げて、ダンスを踊った)。「6カ月間ツアーして、さまざまな人と話した後で初めて、曲の本当の意味が見えてくるのさ」とアダム・クレイトンは振り返った。




4位「Sunday Bloody Sunday」★

「これからやる曲については、いろいろ言われている。でも勘ぐり過ぎだろう」とボノが、『Live: Under a Blood Red Sky』に収録されたライブバージョンで、「Sunday Bloody Sunday」をオーディエンスに紹介した話は有名だ。U2にとっては、新たな野望の始まりだった。「僕たちは、ザ・フーとザ・クラッシュを合わせたようなバンドを目指していたのさ」とボノは後に語っている。1972年、北アイルランドの都市ロンドンデリーで、デモに参加していた無防備な市民へ向けてイギリス軍兵士が発砲し、14人が死亡する虐殺事件が発生した。「曲で歌っているような分裂が、本当に起きる可能性があると知った。だから僕らは、問題を見て見ぬ振りをするのでない。立ち向かおうとしているのだ、と言いたい」とジ・エッジは、あるインタビューで語っている。北アイルランドの「血の日曜日事件」をテーマにした楽曲は、U2の「Sunday Bloody Sunday」だけではない。ジョン・レノンとポール・マッカートニーもそれぞれ1972年末までに、事件を批判する内容の曲をリリースしている。しかし、キリスト教的平和主義のメッセージをより積極的に発信したのはU2だった。ラリー・マレン・ジュニアの軍隊行進曲調のドラムとスティーヴ・ウィッカムのバイオリンをフィーチャーし、ステージ上ではボノが白旗を振った。スティーヴ・ウィッカムは、ダブリンのバス停でジ・エッジに声を掛けたことがきっかけで、レコーディングに参加した。当時ボノは、ローリングストーン誌のインタビューで「人々が棒きれや石ころで応戦するような政治には興味が無い。でも愛のある政治には興味がある」と語っている。




3位「Beautiful Day」★

90年代のU2は、多くのオーディエンスを引きつけた80年代のアンセム的なアルバムを出さずに終えた。そこでバンドは2000年代をスタートするにあたり、初心に返ろうと決めた。「曲のギターサウンドに関しては、かなり話し合った。僕ら自身が作り出したU2のオリジナルサウンドは、長い間放置されてきた。昔のサウンドに戻すべきか否か、というのが話し合いのテーマだった」とジ・エッジは証言した。最終的に、無駄を削ぎ落とした典型的なU2サウンドと、ブライアン・イーノによる華やかなエレクトロニックサウンドを融合させることで落ち着いた。ボノは、オーストラリアの牧師ジョン・スミスの影響を受け、つらい時期を受け入れることの重要性を説く歌詞を書いた。「彼は、落ち込むのも気の持ちようだということを教えてくれた。痛みは生きている証拠だ、とね」とボノは語った。「Beautiful Day」は2000年の終わりにラジオで人気が爆発し、グラミー賞の最優秀楽曲賞と最優秀レコード賞を獲得した。また、『All That You Can’t Leave Behind』の最優秀アルバム賞受賞にも貢献した。グラミー賞授賞式でボノは、「僕たちは世界最高のバンドの仕事に再応募しているところだ」とコメントした。




2位「I Still Haven’t Found What I’m Looking For」★

「僕が夢中になる音楽は、神の領域に近づくか、或いは遠ざかる音楽のどちらかだ」とボノはローリングストーン誌に語っている。U2にとって2度目となるナンバー1シングル曲は、両面性を備えている。「信じるというよりも、疑いのアンセムだ」とボノは評価した。この曲は『The Joshua Tree』のレコーディングセッションの中から、苦労を重ねて生まれた。元々のタイトルは「Under the Weather」で、いつものようにジャムセッションしながら作られた。「最初は、(サバイバーの)『Eye of the Tiger』をレゲエバンドが演奏しているように聴こえた」とジ・エッジは振り返った。一方でダニエル・ラノワは「ビートが素晴らしい」と言う。「ボノの耳元で、トラディショナルなメロディを口ずさんだのさ。すると彼は“それだ! もう歌わないでくれ”と言ってその場を立ち去り、あのメロディが出来上がった」という。歌詞には、ゴスペル音楽に見られるような宗教的な言葉が並ぶが、U2は新たな意味と解釈を含めている。「トラディショナルな感じを、少し捻ってみようとした」とボノは、1987年にローリングストーン誌のインタビューで語っている。「正に、“探しものがまだ見つからない(I Still Haven’t Found What I’m Looking For)”のさ」




1位「One」★

至極のソウルバラードだが、U2がロマンチックな愛、精神的な信念、社会的正義という3つのテーマを同時に前面に出すシングル曲は他にない。「一体化を呼びかける曲だが、“皆で一緒に生きて行こう”という昔ながらのヒッピー的な考えではない」とボノは説明する。「むしろ逆で、“僕らは一つだが、同じではない”と歌っている。我々がこの世界で生き残るためには、互いに調和を保って生きなければならないのさ」

曲がリリースされた当時は、U2内部の不和も噂されていた。「歌詞が天から降りてきた。授かりものだ。『One』はもちろん、バンドのことを歌っている」とボノは振り返る。ジ・エッジの2本のギターによるリフから生まれた音楽に、プロデューサーのブライアン・イーノとダニエル・ラノワが綿密に手を加え、上品な美しさへ緊張感を加えた。結果として、親しみやすさとアンセム的な曲調との完璧なバランスの取れた楽曲に仕上がった。シンプルに徹したリズムセクションとジ・エッジのカラフルなギターサウンドが、「Is it getting better?」と歌うささやき声に近いオープニングから、かすれ声で愛(love)を強調するブリッジ、そして全ての痛みと熱烈な希望を込めてファルセットで叫ぶアウトロまで、ボノの旅路をガイドする。

「One」は、制作時に多くの地理的な「分裂」も起こしていた。まずレコーディングは、冷戦が終了を迎えたドイツで行い、アイルランドでミックス作業をした。ボノは「僕たちがヨーロッパ各地でレコーディングしている間に、ボスニアでは紛争が起きていた。500km弱の場所にいたこともある」と後に振り返った。「One」は、AIDSの調査研究のためのチャリティーシングルとしてリリースされた。ボノは曲を通じて、疾患によって引き裂かれた家族や、愛し合う同士で悩みを抱える人々に語りかけている。楽曲は、ジョニー・キャッシュからメアリー・J.ブライジまで、さまざまなアーティストにカバーされた。また、ビル・クリントンの大統領就任を祝うMTVのイベントにおける、マイケル・スタイプの歌声は印象的だった。「史上最高レベルの曲だ」と評価するアクセル・ローズは、「初めて聴いた時に泣き崩れた」と明かした。




From Rolling Stone US.




U2
『Songs Of Surrender』
発売中
日本盤のみSHM-CD仕様
再生・購入:https://umj.lnk.to/U2_sos_

① 4CDスーパー・デラックス・コレクターズ・エディション
40曲収録/輸入国内盤仕様/完全生産限定盤
② 1CD初回限定デラックス盤 20曲収録
③ 1CD通常盤 17曲収録

〈収録曲〉

① 4CDボックスセット

CD1 – THE EDGE
1. One
2. Where The Streets Have No Name
3. Stories For Boys
4. 11 O’Clock Tick Tock
5. Out Of Control
6. Beautiful Day
7. Bad
8. Every Breaking Wave
9. Walk On (Ukraine)
10. Pride (In The Name Of Love)

CD2 – LARRY
1. Who’s Gonna Ride Your Wild Horses
2. Get Out Of Your Own Way
3. Stuck In A Moment You Can’t Get Out Of
4. Red Hill Mining Town
5. Ordinary Love
6. Sometimes You Can’t Make It On Your Own
7. Invisible
8. Dirty Day
9. The Miracle (Of Joey Ramone)
10. City Of Blinding Lights

CD3 – ADAM
1. Vertigo
2. I Still Haven’t Found What I’m Looking For
3. Electrical Storm
4. The Fly
5. If God Will Send His Angels
6. Desire
7. Until The End Of The World
8. Song For Someone
9. All I Want Is You
10. Peace On Earth

CD4 – BONO
1. With Or Without You
2. Stay (Faraway, So Close!)
3. Sunday Bloody Sunday
4. Lights Of Home
5. Cedarwood Road
6. I Will Follow
7. Two Hearts Beat As One
8. Miracle Drug
9. The Little Things That Give You Away
10. 40

② 1CD初回限定デラックス盤
1. One
2. Where The Streets Have No Name
3. Stories For Boys
4. Beautiful Day
5. Walk On (Ukraine)
6. Pride (In The Name Of Love)
7. City Of Blinding Lights
8. Red Hill Mining Town
9. Ordinary Love
10. Invisible
11. Vertigo
12. I Still Haven’t Found What I’m Looking For
13. The Fly
14. If God Will Send His Angels
15. Until The End Of The World
16. With Or Without You
17. Stay (Faraway, So Close!)
18. Sunday Bloody Sunday
19. I Will Follow
20. 40

③1CD通常盤
1. One
2. Where The Streets Have No Name
3. Stories For Boys
4. Walk On (Ukraine)
5. Pride (In The Name Of Love)
6. City Of Blinding Lights
7. Ordinary Love
8. Invisible
9. Vertigo
10. I Still Haven’t Found What I’m Looking For
11. The Fly
12. If God Will Send His Angels
13. Stay (Faraway, So Close!)
14. Sunday Bloody Sunday
15. I Will Follow
16. 40
17. With Or Without You(日本盤ボーナストラック)

Translated by Smokva Tokyo

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