40位「Love Is Blindness」

『Achtung Baby』を締めくくる、脈打つ鼓動と天空を舞うようなサウンドが印象的な楽曲。ボノが珍しくピアノで作曲した「Love Is Blindness」は、元々はR&Bの歌姫ニーナ・シモンのための作品だった。「ボノが書いた中でも最高の歌詞じゃないか」とジ・エッジは言う。「“a little death”は、失神するほどのオーガズムという意味にも取れるし、テロによる突然の死もイメージできる。個人的な感情と政治的な出来事とをミックスさせたかったんだ」とボノは説明する。非常に個人的な要素が曲に影響したのは事実だ。ギターソロをレコーディング中のジ・エッジは、当時の妻との離婚が迫っていた。「奴はギターの弦が切れるまで弾いていた」とボノは振り返る。



39位「Luminous Times (Hold On to Love)」

『The Joshua Tree』のセッションから生まれた曲で、U2のクリエイティブな才能を証明している。愛の持つパワフルな中毒性を、ダークなうねりと共にボノがエクセレントに歌い上げた。曲のデモバージョンは、シングル「With or Without You」のB面に収められたが、その後編集し直された。レコーディングは、ブライアン・イーノやダニエル・ラノワ抜きで行われた。アメリカのブルーズやゴスペルというよりも、陰鬱なヨーロッパの表現主義的なパンクの領域を目指した。「Luminous Times」は決して完成に至らなかった作品だが、ジ・エッジは「アルバムのどの作品よりも良い曲だ」とイーノに言ったという。



38位「The Electric Co.」

ダブリンの精神科病院で友人が受けていた、拷問的な電気ショック療法への怒りをテーマにした曲。デビューアルバム『Boy』(1980年)のクライマックスとも言える作品。リバーブを効かせたギターは、パブリック・イメージ・リミテッドやエコー&ザ・バニーメンを思わせる。冒頭で繰り返す「boy」は、そのままアルバムのタイトルになった。ステージでボノは、スティーヴン・ソンドハイムの楽曲「Send in the Clowns」を部分的に引用して歌うことが多かった。そのため、ライブアルバム『Under a Blood Red Sky』をリリースした時には、権利関係をクリアするのに非常に高く付いた(以降のリリースでは、引用部分は全てカットされている)。ボノはその後、「Send in the Clowns」の代わりに「Amazing Grace」を挟んで歌っている。安上がりなアイディアだ。




37位「Drowning Man」

記憶に残るきっちり整った楽曲。ボノは、「溺れる者をテーマにした(アイルランドの劇作家)サミュエル・ベケット風の演劇」と表現した。しかし不条理主義の劇作家なら、歌詞のどこにも溺れる者という表現が登場しない点を評価するだろう。ロマンチックな心の愛と、聖書からの引用(イザヤ書40章)とを融合している。ジ・エッジによるアコースティックギターのストロークに、中東音楽風のバイオリンが壮大なタペストリーのように絡み合い光り輝く「Drowning Man」は、後の『The Joshua Tree』への流れを予感させる。ジ・エッジは曲の最終バージョンについて、「完璧だ。僕らがレコーディングした中でも最高の部類に入る」と評価する。



36位「Desire」★

ザ・ストゥージズの騒々しいプロトパンクの名曲「1969」(1988年にリリースされてもヒットしなかっただろう)にインスパイアされ、ボノとジ・エッジが手がけた『Rattle and Hum』からのシングル。ビルボートのトップ5に入り、U2が初めてグラミー賞のステージに立った。ボノは曲を通じて、「ロックンロールのコンサートに見られる熱狂」と自分自身の「成功への欲求」を表現したという。轟くようなボ・ディドリー・ビートに始まり、ボノによる情熱的なハーモニカ・ソロで締めくくられる曲は、ラジオの他のヒット曲はもちろん、前アルバム『The Joshua Tree』の高揚感ある壮大さとも対照的だった。「万人受けする曲でなかったという点が気に入っている」とジ・エッジは言う。「それこそロックンロールであって、ポップソングではないってことさ」



Translated by Smokva Tokyo

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