10位「Even Better Than the Real Thing」

1988年の曲「Desire」と同時期のセッションから生まれた作品。曲の中心となるギターリフは「ザ・ローリング・ストーンズに憧れて」作った、とジ・エッジは言う。元々のタイトルは「The Real Thing」だったが、『Achtung Baby』のセッション中に現タイトルへ変更された。サイレン風のサウンドで始まり、ジ・エッジのエフェクトペダルを駆使したギターサウンドの曲からは、現実離れした躍動するエネルギーを感じる。歌詞は「誰も真実などどうでも良いと思うようになった、今の世界を映し出している」と、ボノは言う。「今は自分が瞬間的に満足できれば、それでいいんだ」



9位「I Will Follow」★

デビューアルバムのオープニングソングは「真っ暗闇から生まれた作品で、心からの怒りと非常に大きな欲求が根底にある」と、ボノは言う。「I Will Follow」は、息子と母親との間の無条件の愛情を歌っている(ボノの母親は、彼が10代の時に亡くなった)。「I Will Follow」は、イギリスで勢いのあったポストパンク界に警鐘を鳴らす作品となった。「ジ・エッジのギターを借りて、上の2つの弦だけでコードを弾いて聴かせたんだ。メンバーに、曲の攻撃的なイメージを伝えたくてね。バックで聴こえる金属音は、自転車を逆さにして、スポークを食器のフォークでハープのように弾いて出したのさ」とボノは振り返る。「I Will Follow」はすぐに、ライブで人気の定番ソングになった。ボストンでのあるギグでは、オープニングとエンディング、それから熱狂的なオーディエンスに求められたアンコールと、合計3度も演奏したという。「自分たちでも信じられない気持ちでステージを降りたよ」とジ・エッジは振り返る。




8位「Moment of Surrender」

『No Line on the Horizon』の中でも異色と言える作品。2年にわたり各地のスタジアムを巡った360 ̊ツアーでは、ほぼ全てのショーのエンディングに使われた。中毒をテーマにした7分半の瞑想曲のタイトルは、自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス」が使う用語に由来しており、中毒患者が自分ではどうすることもできずに助けを求める瞬間のことを指す。「曲の主人公はいわゆるジャンキーということで、タイトルを“Moment of Surrender”と付けた」とボノは、ローリングストーン誌とのインタビュー(2009年)で明かした。「悪魔と闘う勇気ある決断をした人間を、多く知っている。自分も危うく彼らと同じような立場にいたかもしれない、と思うこともある」と彼は言う。過去に中毒問題を克服した経験を持つプロデューサーのダニエル・ラノワが、コーラスのメロディを考えた。曲の他の部分は、即興のジャムセッションから作られた。ゼロ状態からの即興の1テイクが、アルバムに採用される曲へと仕上げられた。「時々、奇跡の風が吹き抜けることがある」と、『No Line on the Horizon』のリリースを前にしたインタビューで、ボノは語っている。「スタジオに神が降りてくるのを待っているような、とても不思議な感覚だ。でも結局、神頼みは当てにならない、ということになるのさ」



7位「With or Without You」★

『The Joshua Tree』からの1stシングルで、「当時の音楽の中でもユニークな存在だった。80年代のメンタリティーではなく、全く別の次元から生まれた曲だ」とジ・エッジは言う。クリアなサウンドとローキーな映像のMVが印象的な「With or Without You」は、洗練されすぎて型にはまってしまった80年代ロックに一撃を食らわせた(ボノは「ちょっとささやいた程度だ」と言う)。「With or Without You」はアメリカにおける初のナンバー1ヒットとなり、図らずもU2はポップスターの仲間入りをした。「自分たちの曲がラジオから流れる日が来るなど、想像していなかった。それに教会からも聴こえて来るなんて、予想外だ」とクレイトンは語った。歌詞は、1960年代のアメリカの公民権運動や「ニュージャーナリズム」にインスパイアされた。シンプルなベースのグルーヴと美しいギターのハーモニーが、ボノの悲痛な声を支える。恋愛における痛みを伴う両面性を静かに歌う「With or Without You」は、現在を含めてU2を代表する曲の一つとなっている。「バンドの中で僕が時折感じることについて歌った」とボノは明かした。「メンバーは、僕が自分をさらけ出しすぎると思っているはずだ。僕がU2の名前に傷を付けるとしたら、僕がオープン過ぎるせいだ」




6位「Where the Streets Have No Name」★

『The Joshua Tree』のオープニングソングで、ジ・エッジによる1分を超えるキラキラしたギターのイントロから始まる「Where the Streets Have No Name」は、制限の無い最も効果的な方法で自由を喚起している。曲のベーシックトラックは、ジ・エッジが自宅のスタジオで作ったアイディアをベースに作られた。しかし共同プロデューサーのブライアン・イーノが後に明かしたところによると、アルバムのレコーディング時間の半分は「Where the Streets Have No Name」に費やされたという。一つの曲を完成させるまでのプロセスには、相当な苦労があるということだ。「曲のアレンジを大きな黒板に書き出していると、まるで科学の教授になったような気分だった」とダニエル・ラノワはローリングストーン誌に語った。ボノは「自分たちの潜在力か神の力か何かわからないが、“魂”とか“イマジネーション”とでも言うべき何か大きなパワーが込められている」と後に語っている。ザ・ビートルズによる最後のパフォーマンスへのオマージュとも言えるMVは、ロサンゼルスにあるリカーショップの屋上で、周辺を数時間にわたり通行止めにして撮影された。「何百回と模倣されてきた手法だ」とビデオの監督を務めたメイアート・エイヴィスは振り返る。「しかし、反抗心が興奮を生み出す。自由であることの実感が、ファンとバンドを輝かせる」



Translated by Smokva Tokyo

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