45位「Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me」

イギリスのトリップ・ホップのアーティストとしても知られるネリー・フーパーが共同プロデューサーとして参加した作品で、元々は『Zooropa』のセッションから生まれた。実際に『Zooropa』のジャケットには紫色の飾り文字で「ISSMEKILLM」と、曲名の一部がデザインされている。しかし曲が世に出たのは1995年で、映画『バットマン フォーエヴァー』のサントラのリードシングルとして大ヒットした。それまでボノとジ・エッジが関わったヴィム・ヴェンダースやロバート・アルトマンといった、より芸術的な映像作品とは趣の異なる映画での成功だった。当初ボノは『バットマン』に使用されることに反対していたというが、ジ・エッジは「使い捨てのような娯楽作品に使われるのも悪くないんじゃないかと思った」という。結果としてギャンブルは成功し、彼ら独自の90年代のダンス・フレーバーにメロディアスな要素を加えた「Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me」は、『Zooropa』に収録されたどの作品よりもヒットした。「もし君が33まで生きていたら、彼らは金を返せと言う」とボノは歌う。U2はPopmartツアーのステージセットで、若くしてこの世を去ったジム・モリソン、イアン・カーティス、カート・コバーン、トゥパック・シャクールらのイメージをアンディ・ウォーホル調にスクリーンへ映し出し、スターとして浴びるスポットライトとは裏腹の暗い一面を表現した。



44位「No Line on the Horizon」

バンドは2006年から、ベテラン・プロデューサーのリック・ルービンと共に、次のアルバム『No Line on the Horizon』の準備に入った。ところがセッションが上手く進まず、結局は長年組んで気心の知れたダニエル・ラノワとブライアン・イーノに頼ることとなる。バンドはモロッコに渡り、4+2の6ピースバンドとしてレコーディングを開始した。「心にぽっかり穴の空いた少女」を歌った躍動するタイトルトラックは、1テイクで完成した。「ライブ感があってバッチリ決まった」とジ・エッジはローリングストーン誌に語っている。ボノは「2009年版のロックンロールだ」と言う。「アルバムのタイトルは『The Pilgrim and His Lack of Progress』(巡礼者と進まぬ旅路)でもよかったかもしれない。登場するキャラクターは皆、自分の価値観に忠実でありたい、とか自分の可能性を発揮したい、と願うものの、なかなか上手く行かない人々だからね」



43位「Lemon」

「ブライアン・イーノが手を加えるまでは、ディスコ曲だった」と『Zooropa』でエンジニアを務めたフラッドは証言する。結局、ボノのファルセットが印象的なドライブ感のあるダンストラックに仕上がった。イーノによるクールなトーキング・ヘッズ風のバックコーラスのおかげで「とても風変わりなフォークソングになった」とフラッドは言う。当初はドラムマシンを使ってレコーディングされたが、最終的にマレンの生ドラムを採用した。アップビートのアートロックの雰囲気とは対象的に叙情的な「Lemon」は、「8mmで撮影された母親の映像を、遠い親戚から郵便で受け取った奇妙な経験」をきっかけに、ボノが作った曲だ。「映像の中の母は今の僕よりも若い24歳で、ラウンダーズというアイルランドの球技をする姿がスローモーションで流れていた」とボノは振り返った。



42位「In a Little While」

ボノが、飾り気を取り除いたソウルフルな「In a Little While」を書いた時点では、飲み明かして翌日は二日酔い間違いなし、という単純な曲のはずだった(「金曜の夜を飲み明かし/日曜までダウン」とボノは歌う)。ところが曲のリリースからわずか1年後にジョーイ・ラモーンががんで亡くなると、「In a Little While」は別の意味を持つようになる。ジョーイ・ラモーンは生前、U2のファンであることを公言しており、特に『All That You Can’t Leave Behind』に収録された「In a Little While」は、病室で最期に聴いていた曲だと言われている。「ジョーイが、ただの二日酔いの歌をゴスペルソングへと変えてくれた」とボノは後に語っている。「今では常に、この曲がジョーイ・ラモーンの耳を通して聴こえてくるんだ」



41位「Volcano」

2014年の『Songs of Innocence』は、ダブリン時代のバンドが成長する過程を描いたコンセプトアルバムだった。「ありのままの自分たちを表現したかった」とボノはローリングストーン誌に語っている。「バンドを結成した時の自分たちの意気込みと、僕たちを取り巻く環境や仲間たち、家族や恋人らを思い返した。アルバム全体が地理的な意味での旅でもあるし、精神的な旅だったり愛情的な旅でもある。辛い思い出もあるが、僕たちが経験してきた旅路なんだ」と彼は言う。唸るようなベースのフックから始まる「Volcano」は、ジ・エッジの作品だ。バンド結成前のティーンエージャー時代にボノが感じた怒りを込めている。「かつては独りぼっちだった」と彼は歌う。「でも今は独りじゃない。ロックンロールがある」


Translated by Smokva Tokyo

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