25位「All I Want Is You」★

ボノによる、最も心に突き刺さるラブソング。おぼろげに光るバラード「All I Want Is You」は、妻アリに対する優しい思いやりの言葉だ。「心からの献身を歌った曲だ」とボノは言う。ジ・エッジが奏でる哀愁漂うコード進行は、同時期に作られた「Desire」にも通じる。ビーチ・ボーイズの長年のコラボレーターであるヴァン・ダイク・パークスによる映画音楽のようなストリング・アレンジのおかげで、素晴らしい作品に仕上がった。ジ・エッジはパークスのストリングスを、「心に残る、ゴージャスなアレンジ」と評している。また、「トラディショナルな音楽だが、『Rattle and Hum』の中で最も思い通りに仕上がった作品だ」とも語っている。




24位「Stay (Faraway, So Close!)」★

『Zooropa』からの3枚目で最後となるシングルで、フランク・シナトラに捧げた、シンプルでエレガントなサウンドの作品。「僕らのサウンドは、フランク・シナトラのバックバンドとは似ても似つかない。でもシンプルなコンボ・サウンドを目指した結果、いい感じに仕上がったんだ」とクレイトンは言う。元々は『Achtung Baby』のセッションで作られた曲だったが、ヴィム・ヴェンダースの映画『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』(1993年)のタイトルトラック向けにアレンジされた。「人間になって地球で暮らしたかった天使の話さ」とボノは言う。「ただし人間になるには、限りある命を受け入れなければならない。不可能なものを手に入れたいと望む気持ちと、実現した時の代償というテーマが、曲の大きなインスピレーションになった」




23位「Mofo」

「何カ月も仕上がらずに無駄な時間を過ごした」とクレイトンは言う。バンドは(プロデューサーの)フラッドに、「どうせならヒップホップにしてしまおう。一度バラバラにして、ビートを変えて、どうなるか試してみよう」と提案した。結果として『Pop』の中で最も衝撃的なエレクトロニカ・エクスペリメントとなった。ビートの効いたテクノは、同時代のクリスタル・メソッドやフューチャー・サウンド・オブ・ロンドンを思わせる。しかし未来志向な曲調とは裏腹に、ボノは過去を振り返っている。「僕自身の人生全てが、曲の中に凝縮されているような気がする」と彼は言う。「特にライブでやる時は特別だ。音の中に埋もれて、5万人の親友たちの前で自分の母親に語りかけているような気分になるんだ」



22位「A Sort of Homecoming」

『The Unforgettable Fire』のオープニングトラックで、U2がブライアン・イーノとダニエル・ラノワの2人と初めて組んだ作品。アイルランドの海岸沿いにある、19世紀のマーテロ塔を改装したボノの自宅で作られた。天に上って行く曲だが、正に軍隊行進曲のようにも聴こえる。「A Sort of Homecoming」は、ユダヤ系ルーマニア人の詩人パウル・ツェランの影響を受けている。ツェランは、U2と同様、作品の中に宿る精神的な信念のイメージと格闘した。さらに、詩とは「自分自身の探求へ身を投じるための道のり。つまり一種の帰郷(homecoming)のようなもの」と表現している。ジ・エッジによる抽象的なギターの上に、ボノによる最も説得力のある詩が流れる。そしてイメージと誓いとメロディとが一緒になって回り出し、心の中の荒れ果てた戦場に思いを馳せる。「ロックンロールの多くは、平凡なアイディアを上手く利用している。一方で僕たちのやっていることは、本当にユニークなアイディアに基づいているんだが、上手く利用しているとは言えない」とボノは、自虐的に語る。U2の大ファンだというクリス・マーティン(コールドプレイ)も、ボノに同意した。「ドラマチックな展開で、熱狂的で、素晴らしく、美しい。自分の子どもがお腹にいる時に聴かせた最初の曲だ」



21位「Bullet the Blue Sky」

1986年、ボノは妻アリと一緒にエルサルバドルを旅行した。当時は悲惨な内戦の真っ最中だった。彼らは、米軍の支援を受けた独裁政権による残虐行為を目の当たりにする。彼らの目の前で、F-16戦闘機が一般市民の暮らす村々を襲撃していた。アイルランドへ帰国したボノは、バンドと共に『The Joshua Tree』のセッションに入る。彼はジ・エッジに、「ギターアンプを通してエルサルバドルの惨状を表現する」よう伝えた。結果、レッド・ツェッペリンを彷彿させる、鋭く爆発的で迫力ある重厚なサウンドが実現した。ボノの歌詞は、帝国主義と人種差別をもたらす米国のダークな一面に迫る。「米国を愛しているし、憎んでもいる」とボノは語った。「僕は、米国の持つ両面性の板挟みになっている」


Translated by Smokva Tokyo

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