20位「Out of Control」★

U2が自己紹介代わりに「Out of Control」を演奏していた頃、彼らはまだティーンエージャーだった。ボノが18歳の誕生日に書いた曲だ。しかし将来を見据えた真面目な青年たちは既に、「月曜の朝に目覚めて、18年目の夜明けを迎えた」などと、幼少期から抱える不安について考えを巡らせていた。曲が初めて世に出たのは、1979年9月にリリースされた3曲入りEP(7インチ&12インチ)で、アイルランドのシングルチャートのトップ20に入った。『Boy』の楽曲は全体的に、ジョイ・ディヴィジョンやスージー・アンド・ザ・バンシーズといったゴスパンクの影響が大きい。ボノはかつて「デビューアルバムは作り直したい。せめてスージー・スーっぽい歌い方は止めたい」と振り返っている。




19位「Running to Stand Still」

2013年にボノがローリングストーン誌へ寄稿した故ルー・リードへの追悼エッセイの中で、「Running to Stand Still」は、U2がルー・リードから受けた影響の大きさを示す「現行犯の証拠」だと表現している。歌詞は、U2にしては珍しく麻薬中毒をテーマに取り上げた。曲は、デルタブルーズ風のスライドギターから始まり、繊細な祈りの歌へと展開していく。メロディは、リード率いるヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名作「Heroin」に通じるものがある。「Running to Stand Still」は、スタジオでほぼゼロの状態から即興で作られた。プロデューサーのダニエル・ラノワは後に「あの時は、部屋全体が素晴らしく一体化した」と振り返っている。ジ・エッジも「一気に曲が出来上がるのは、奇跡的だ」と語った。



18位「Gloria」

ラテン語で歌われた史上最高のロック・アンセムではないだろうか。まだ立ち上がって間もないMTVで、「Gloria」のMVがアメリカンキッズの間で人気となった。ビデオの中でまだ若々しいバンドが、ダブリンのグランド運河に浮かぶ船の上で演奏している。そして岸側では、決して裕福そうには見えない身なりの若者たちが、バンドの演奏で盛り上がっている。ヴァン・モリソンによる60年代の同名の名曲(パティ・スミスが1975年にカバー)を意識した「Gloria」で、ボノは、ティーンエージャーの宗教的熱情について嘆き(“Gloria in te domine“)、ジ・エッジはサイケデリックなスライドギターを聴かせる。ラテン語の歌詞は、バンドのマネージャーだったポール・マクギネスが所有していたグレゴリオ聖歌のアルバムにヒントを得たという。「エンディングのラテン語のコーラスはとてもクールだ」とボノは語った。「皆で盛り上がる、壮大なオペラのようだ」



17位「Walk On」★

ミャンマーの、アウンサンスーチーに対する政治犯としての扱いにインスパイアされた曲。「Walk On」は、大義名分の下に大きな犠牲を強いる力をテーマにしている。「愛は一筋縄ではいかない。唯一自分で持ち運べる荷物は、後に残してはいけない物(All That You Can't Leave Behind)だけだ」というイントロの語りの中に、U2の最も感動的なアルバムのタイトルが盛り込まれている。「この曲はマントラであり、虚しさを燃やす焚き火だ。自分から求められるのは“愛”だけだ。愛以上のものを求めても意味がない」とボノは言う。2000年代のジ・エッジのベストプレイとも言えるギターの美しいメロディをフィーチャーした「Walk On」は、世界各国のチャートにランキングし、グラミー賞の最優秀レコード賞も獲得した。またライブでは、2010年に軟禁を解かれたアウンサンスーチーへ捧げる曲として、毎晩演奏された。



『Songs Of Surrender』版「Walk On」は、ウクライナ情勢を踏まえて歌詞をアップデート

16位「Zooropa」

「曲のオープニングは、映画『ブレードランナー』の映像世界を音で表現した。目を閉じて曲を聴けば、ネオンサインやLEDの巨大スクリーンに映し出される広告が浮かぶだろう」とボノは、未来志向の作品「Zooropa」の冒頭に採用された早口の合成音声について説明する。曲作りは、エンジニアのジョー・オハリヒーが録音していたZoo TVツアーのサウンドチェック時のジャムセッション素材から、ジ・エッジがバッキングトラックとして使えそうな部分を探し出し、プロデューサーのフラッドがバラバラの素材をつなぎ合わせ、さらにブライアン・イーノがシンセを加える形で進められた。「かつては誰もがインディーで、どんよりして退屈なアンダーグラウンドの世界だった」とボノは言う。「ヒューストンや東京のようなモダンな都会を歩き回り、楽しめるのは最高だ」


Translated by Smokva Tokyo

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE