15位「Mysterious Ways」

1991年の時点で、U2がダンスバンドを目指しているとは、誰も想像できなかっただろう。しかし『Achtung Baby』からのトップ10ヒット曲「Mysterious Ways」には、ダンスバンドの可能性が見えていた。バンドの変容に大きな役割を果たしたブライアン・イーノは、「底が厚く頭が軽い」曲だと、巧みに言い表した。未発表曲「Sick Puppy」から借用したクレイトンのうねるベースラインと、プロデューサーのダニエル・ラノワの叩くコンガが、曲にスウィング感をもたらしている。女性の持つ魅力的なパワーを称えるボノの歌は、最高に楽しそうに聴こえる。



14位「Please」

「Sunday Bloody Sunday」から14年後、U2は、北アイルランド紛争をテーマにした2枚目のシングル曲をリリースした(ブリッジ部分のマレンのドラムは、1983年のヒット曲に通じるものがある)。マレンがU2にとっての「ディスコの師匠」と呼ぶプロデューサーのハウィー・Bが、メンバーを夜な夜なダンスクラブへ連れ出して、『Pop』のエレクトロニック・サウンドの基礎を作った。スタジオでハウィー・Bが、同じく『Pop』に収録された「If God Will Send His Angels」のドラムビートをループ再生し、ボノが「Please」のメロディを乗せてみると、見事にはまった。「全員が“おぉ!”という感じだった」とハウィー・Bは振り返る。「奇跡の産物だ」



13位「Every Breaking Wave」★

デンジャー・マウスとワンリパブリックのライアン・テダーがプロデュースに参加した楽曲で、『The Joshua Tree』時代のU2を思わせる壮大なアンセムに仕上がった。元々は2010年のツアー中に、未発表のバラードとして披露した作品だった。4年後、『Songs of Innocence』向けにテダーが大きく手を加えたことで、新たな曲として生まれ変わった。「他人に身を委ねることがどれほど難しいかを歌っている」とボノは説明する。「Every Breaking Wave」がコールドプレイ風に聴こえたなら、U2が依然としてメインストリームのロックサウンドに忠実であり続けていることの証拠だ。「Every Breaking Wave」は、アコースティックバージョンもまた味がある。




12位「Pride (In the Name of Love)」★

ローリングストーン誌のライターであるジム・ヘンクがボノに進呈したマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの伝記『Let the Trumpet Sound』にインスパイアされ、レジスタンスと愛をテーマに作った楽曲。壮大なメロディとコード進行は、ハワイでのサウンドチェック中に浮かんだという。歌詞に関しては「シンプルなスケッチ」だ、とボノは表現した。ブライアン・イーノとダニエル・ラノワと組んだ初期の作品で、バッキングボーカルにプリテンダーズのクリッシー・ハインドが参加し、曲に迫力を増している。80年代後半にアリゾナ州で行ったコンサートを前に、ボノに対して「Pride」を歌ったら殺すという内容の脅迫が届いた。もちろんボノは、脅しに屈することなくセットリストに含めた。




11位「New Year’s Day」

U2がブレイクするきっかけとなった曲で、雪原の中を馬に乗って駆け抜けるMVも話題になった(ジ・エッジが後に認めたところによると、実際に馬に乗っていたのはメンバーではなく、スカーフで顔を覆った4人の女性だったという)。驚くことにクレイトンのベースラインは、ニューロマンティックの旗手ヴィサージによるディスコヒット曲「Fade to Grey」からインスピレーションを得たという。「New Year’s Day」は、ポーランドの労働組合「連帯」の創設者兼リーダーだったレフ・ワレサをテーマにした曲だ。当時のポーランド政府は連帯の活動を非合法とし、ワレサは1981年12月に収監された(その後1990年、ポーランドの民主的選挙で選ばれた初の大統領となる)。「ラブソングでもある」とボノは言う。「困難に立ち向かう時、愛こそが最も頼りになる」


Translated by Smokva Tokyo

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