35位「Until the End of the World」★

民族音楽的なビートを重ねた楽曲で、ボノ曰く「キリストとユダの会話」にインスパイアされて作ったという。曲作りも一筋縄ではいかないことを、U2が示している。以前ボノが思い付いたギターリフが「Fat Boy」というタイトルでデモテープに残されたものの、そのまま放置されていた。その後、ヴィム・ヴェンダース監督の映画『夢の涯てまでも』向けの楽曲を検討している時にジ・エッジが発掘し、サウンドトラック用にアレンジした。彼らは自分たちのアルバム用として躍動感あるバージョンを再レコーディングした上に、ヴェンダース監督に対して「あなたに曲を提供したんだから、僕らも見返りがほしい。だからタイトルをください!」ということになり、曲には映画と同じタイトルが付けられた。




34位「Gone」

「バンドが成功しているからと言って、僕たちに罪悪感を押し付けようとする奴らに対する軽蔑のジェスチャーさ。僕たちはいつでも世界一のバンドを目指して、努力を続けてきた」とボノはかつて語った。『Pop』収録曲「Gone」の中でボノは、ガラスへドリルを突き刺すようなギターサウンドをバックに、「大した苦労もせず大金を手にすると、罪悪感を持つようになる」と、有名になることへの代償を歌う。「ギターが作り出せるサウンドは、今やどれも陳腐なものになっている。使い古されていないギターサウンドを見つけ出すのが難しいんだ」とジ・エッジは言う。Popmartツアーでは時折、INXSのボーカルだった亡きマイケル・ハッチェンスに捧げる曲として演奏された。あるコンサートでボノは「どんどん行け、でも死んだらいけない」と語っている。



33位「Stuck in a Moment You Can’t Get Out Of」★

ボノは、INXSのフロントマンだったマイケル・ハッチェンスと仲が良かっただけに、1997年のハッチェンスの自殺はかなりの衝撃だった。『All That You Can't Leave Behind』からのソウルフルな「Stuck in a Moment You Can’t Get Out Of」を通じてボノは、亡き友との交わされなかった会話を続けている。「もしもマイケルがあと30分間、散歩でもしていたなら、彼は今も生きていたかもしれない」とボノは言う。「彼に対する最大のリスペクトは、無理に涙を誘うようなくだらない曲を作らないこと。だから敢えて厳しく、彼を叱咤するような内容にした。悪いが、僕にできる精一杯だった」




32位「City of Blinding Lights」★

『Pop』のセッション時に作った曲だが、完成させたのは7年後のアルバム『How to Dismantle an Atomic Bomb』だった。歌詞は、ティーンエージャーだったボノが当時まだガールフレンドだったアリ(妻)と初めて訪れたロンドンと、1980年にバンドとして初めて訪れたニューヨークがテーマになっている。「ボノの描く歌詞の世界が好きだ。まるで映画のように、風景や時代が思い浮かぶ。ニューヨークは本当に心が落ち着く街だ」とジ・エッジは言う。曲は、バラク・オバマが2008年の大統領選挙キャンペーンに使用したことで、再度注目された。




31位「Discothèque」

「ダンスミュージックを掛けながら、友人たちと夜通し過ごした。僕たちも若かったし、毎日が楽しかった。そんな時代の思い出を曲の形で残しておきたかった」とボノは、この曲の誕生についてローリングストーン誌に語った。『Pop』からの1stシングル「Discothèque」は、90年代のエレクトロニックミュージック・シーンに放った最初の1発だった。おそらくU2のキャリアの中で、最も賛否両論のある時期だろう。無機的なテクノの雰囲気を持つ「Discothèque」についてボノは、「ゴミのように扱われがちな、愛についてのやや難解な謎」と表現している。MVでは、メンバーがヴィレッジ・ピープルのような格好で登場する。「バンドとして常に、新しい音楽を作ろうと努力している。僕たちにとっては恐ろしい境地でもある」とボノは、バンドの新たなサウンドについて語った。ボノの感じる恐怖は、当然だと言える。しかし、思い切った変化に対する受け止め方はさまざまだ。例えばニューヨーク・タイムズ紙は「かつてのU2のサウンドは直感的に素晴らしかった。しかし今は高価なもののように聴こえる」と評した。『Pop』はチャート1位を獲得するも、3週間後にはトップ10から転落した。U2は商売気を失ったのではないか、という声も上がった。「僕たちはアメリカだけを相手にしているのではない」とボノはローリングストーン誌に語った。「28の国でナンバー1になった。それでも足りないというのか? 僕たちにどうして欲しいんだ?」


Translated by Smokva Tokyo

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE