プロデューサー高橋研が振り返る、中村あゆみや加藤いづみの楽曲



田家:アルバムを聴き直していて、今っぽいなと思いました。

高橋:Aメロとか2コードでいっているんですけども、できるだけコード数少なくいきたい時代の僕がこの中にいる。昔で言うとアメリカっていうグループがいて「名前のない馬」っていう2コードだけの曲があって、そういうのがずっとやりたかったんです。そういう気分がちょっと出ている曲ですね。

田家:ここ数年の所謂シティポップという流れに入るんじゃないかと。

高橋:そうなのかな。分からないんですよね、自分の作った曲ってどう聴こえているのかが。結構曲数作りますからね、だんだん自分の中でも訳が分からなくなっていくんですよ。

田家:先週話にも出た星空、宮沢賢治、銀河鉄道、そういう流れもここにありますね。

高橋:そうですね。子どもの頃に育った場所が空気が澄んでいてとても星が綺麗な場所だったので、自分の中に溜まっている記憶があるんだと思うんですよ。風とかね。自分の中でこの言葉よく使うなっていうのがあったりして、それは幼児期の体験に基づくものですね。

田家:それがこの曲のある種の風通しのよさにも繋がっている。シティポップというブームはどんなふうにご覧になっているんだろうと思いながら。

高橋:やっぱりメロディがいいんだと思うんですよね、すごく。今のポップスってやっぱり起伏が激しいじゃないですか。そうではなくてやっぱり歌いやすい曲が多いなと思いますね、昔の曲はね。

田家:「星空のジェットプレイン」もそういう意味では流れの中に入りますね。

高橋:ええ、入ってほしいですね(笑)。

田家:アルバム30周年盤の中にはさっきの「好きになって、よかった」の2023年版、新録バージョンが入っているのでその曲をお聴きいただきます。加藤いづみさん「好きになって、よかった(2023)」。



田家:これはアレンジとプロデュースが武部聡志さんで、研さんは関わっていない?

高橋:ええ。武部さんが以前中村あゆみの「翼の折れたエンジェル」を大黒摩季さんがカバーしてくださるということで電話かかってきて「研さん、ここのメロディなんだけど、この音なの? ちょっと微妙で分からないんだけど」、「あ、どっちでもいいんです」って言ったら「え! どっちでもいい曲なんてないよ」って。結構あゆみはこっちを歌っているけど、俺がライブのときにやるのはこっちみたいな感じで半音違うんです。僕はディランとかが好きだから、ディランって結構メロディもコードも簡単に変えるし、そんなのどっちでもいいのになと思って生きていたタイプなので(笑)。だからちゃんとしてるな武部さんなと思いながら聴きました。ちゃんとしてない方がたぶん僕のタイプではあるんですね、きっと。

田家:さっきのもそうですもんね。どこか隙間があるみたいな。

Rolling Stone Japan 編集部

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