プロデューサー高橋研が振り返る、中村あゆみや加藤いづみの楽曲



高橋研さんとちゃんと話すようになったのは、中村あゆみさんをプロデュースするようになってから。シンガー・ソングライターとしてデビューしたときはやっぱり拓郎さんとか浜田省吾さんとかそういう流れの中で出てきたシンガー・ソングライターという目で見ていて、ちゃんと話はしてなかったんです。あゆみさんのプロデュースをするようになってからはいろいろな話をしましたね。

あゆみさんと研さんの出会いというのが運命的で、中野のお互いの行きつけのスナックが一緒だったんですね。あゆみさんは福岡から母親の関係でアイドルになるので上京したんですけれども、縛られるのが嫌だと契約を破棄してしまい親からの仕送りがなくなって定時制高校に通いながら自活してたんですね。研さんと初めて会ったのは、あゆみさんが泥棒に入られた日だったと思うんですよ。スナックに泣きながら入ってきて、研さんがなんだこいつって思ったというところから始まって、彼女が歌うのを聴いて自分がプロデュースするイメージが浮かんだという話を聞いたことがありました。

今日初めて知ったのですが「翼の折れたエンジェル」はあゆみさんのことではなくて、自分のことだった。自分の恋愛が上手くいかなくて、俺は翼が折れたエンジェルなのかもしれないと思った。彼があの曲を今自分で歌っているのは当然の帰結ということになるんでしょうね。来年がデビュー45周年、新作『Free Bird』はもう折れない翼を手にしている。あらためて思い出したのですが、小山卓治さんと高橋研さんが初めて一緒にライブをやったとき、僕がそこにいた。そういう意味ではこの2人の組み合わせは当時から好きだったんだと思います。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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