プロデューサー高橋研が振り返る、中村あゆみや加藤いづみの楽曲



田家:矢沢永吉さん1996年5月発売の「MARIA」。作詞が研さんで作曲が矢沢さんです。

高橋:これは矢沢さんが詞を書いたようなものなんですよね。MARIAというのは奥さんのお名前なんですけど、古い写真があってさみたいなことをずっと説明してくださって。それを僕が書記みたいに詞に起こした、メロディに合うように。だから、言葉のディテールは違いますけど、大元は矢沢さんがおっしゃったことなんですよね。

田家:この曲の入ったアルバム『MARIA』も全曲作詞でしょう。次のアルバム『YES』も全曲ですもんね。矢沢さんとはそういう意味ではある種の波長が合った?

高橋:どうなんでしょう。波長が合ったなんて恐れ多くて言えないですけど、『Freedom』っていうアルバムをどこかで手に入れて聴いてくださったらしくて。

田家:矢沢さんが。

高橋:ええ。それでこいつとやりたいっておっしゃったらしいんですよ。それを後から聞いて、ありがたいなと思ったんです。こいつは歌下手だけど詞はいいよって言ったらしい(笑)。

田家:アルバム全曲というのは、研さんは全曲お書きになること多いですけども、全曲と言われたときとシングルと言われたときは違うものですか?

高橋:全曲と言われると、アルバムのバリエーションを少しは考えるので。ラブソングばかりじゃなあとか、ちょっとスピードがあるやつとゆったりなやつを使い分けなきゃなとか、言葉の使い分けとかもいろいろ考えたりするので。単独で1曲というよりはいろいろそういうことでは考えます。

田家:それはもうプロデューサー的な。

高橋:そうですね。アルバム通して全体で1個のカラーになるように良い流れもある程度イメージしますから。

田家:プロデューサーとしてやらせてほしいとお願いをすることもあるわけでしょう?

高橋:いや、プロデューサーとしてやらせてほしいなんて1回も言ったことないです(笑)。

田家:そういう意味では謙虚という言葉が合っているかどうか分からないですけども。

高橋:やっぱり基本的にシンガー・ソングライターなんですよね、出が。だから、僕なんかに任せていただいたら困りますよって感じが未だにありますもん。僕はただの歌歌いなんでって逃げ口上を作りながら生きている感じがありますもん。

田家:その中で矢沢さんとの仕事はどんなふうに?

高橋:励ましてくださったり、お前最高だよってすごい褒めてくれるんですよ。で、後でダメ出しはされるんですけど(笑)。

田家:次の曲は矢沢さんがインタビューでもこの曲の詞いいでしょうという話をしていました。2001年のシングル「背中ごしのI LOVE YOU」。



田家:何も見えないぜ明日はどっちだって、矢沢さん、ここを絶賛されていましたね。

高橋:ああ、そうですか! 久しぶりに聴いたらAメロとかもギター2本ともう4リズムなんですねー。やっぱりロックバンドの人なんだなと思いますね、かっこいいなと思って、Aのところとか薄いオケですよね。

田家:あらためていい詞だなと思われたりしましたか?

高橋:すみません、詞のことじゃなくてオケのことが気になって、かっこいいなと思って。

田家:今のモードですね。研さんの。

Rolling Stone Japan 編集部

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