松本隆、シーン復帰後から2000年代までの歩みを辿る

硝子の少年 / KinKi Kids

1997年7月発売。KinKi Kidsのシングル「硝子の少年」。作曲が山下達郎さんです。松本さんが組んだ作曲家の中の1つの特徴というのでしょうか、傾向と言うほど大げさではないですが、バンド出身者というのがかなりいるんですね。例えば、桑名正博さん、矢沢永吉さん、氷室京介さん、山下達郎さん、それぞれがその時代を代表しているロックバンドでもあるわけですけど、そこから始まった作曲家、メロディメーカー、アーティストとちゃんと組んでいる。はっぴいえんどから始まった日本のバンドヒストリーをそういうバンド出身のアーティスト、作曲家と組むことで、松本さんも別の流れでそういうストーリーを綴っているとあらためて思ったことでもあります。

逹郎さんは近藤真彦さんの「ハイティーン・ブギ」でコンビを組んでますよね。でも、松本さんの中ではシュガー・ベイブの山下達郎という意識はなかったというふうに言ってましたね。はっぴいえんど解散コンサートの時のシュガー・ベイブはまだこれからどうなるか分からないという時期で、大滝さんが手がけるバンドとして見ていた。ソロになって自分のアルバムを出して作曲家として「あ、いい曲を書くね」と思って、コンビを組むようになったとは言っていました。そういうバンド出身者ということもそうですし、何度か話をしているというのが男性アーティストの曲には何度か話している「通底」がありますね。同じものが流れている。矢沢永吉さんの「サブウェイ特急」とか、原田真二さんの「てぃーんずぶるーす」とか、それから近藤真彦さんの「スニーカーぶる~す」とかですね、どこか壊れそうに脆くて陰っている青春、生き急ぐ青春を歌われている。

KinKi Kidsもそういう流れにあって、「硝子の少年」は新宿西口のバスターミナルを舞台にした別れの情景なんだと言っていました。作詞家デビュー38年目ですよ。大体そのアーティスト、作家のピークはわりと早めに来るものですけど、松本さん最大のヒット。ピークをもし数字で表すとすると、ここがピークということになるのかもしれません。復活した松本隆、次の世代のアーティストと組んでいます。Chappieの1999年のシングル「水中メガネ」をお聴きいただきます。

Rolling Stone Japan 編集部

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