岡村靖幸『yellow』、当時のプロモーターと未だ得体の知れない才能について語る



田家:お聴きいただいているのはアルバムの4曲目「Check out love」。これは発売直前の2枚目のシングルだった。

西岡:そうですね。このブラコン的な感じって言うの? 急に「Out of Blue」からこれっていうのもなかなかちょっと意外な感じもしたかもしれないんですけども。これがなぜ2ndに選ばれたかっていうのはちょっと僕も分からなかった。

田家:「Young oh! oh!」はシングルで出すって決まっていたんですか?

西岡:そうですね。大体先行シングル、それからその後、その後で決めていったと思います。

田家:さっき曲が流れている時に福田さんがふとおっしゃったのが「あまり踊りっていう要素はプロモーションの中でスポットが当たってなかったかな」と。

福田:あえてキーワードとしてダンスというのを前面に出してやってなかったんじゃないかなという記憶があったんですけども。

田家:西岡さんの中ではどうですか?

西岡:最初の「Out of Blue」のPVの中ではその片鱗は伺える動きはしていて、妖しい動きは(笑)。

田家:セクシーな動き。

西岡:まあ、セクシーと言えばセクシーです。そこの片鱗が見えるんですけども、当時マイケル・ジャクソンとかいろいろなアーティストがいて、そういう影響も多少はあったのかもしれないけども。僕らもダンスの岡村という形ではあまり捉えてなかったかもしれないね。


岡村靖幸1stアルバム『yellow』ジャケット写真

田家:デビューの時の資料、今お持ちいただいた岡村靖幸というペーパーバックのにもちょっとありましたけど、自分の音楽に対して松田聖子、ビートルズ、プリンスの三角形の真ん中に自分がいるという。

西岡:だからちょっと変わっているけど、分け隔てなく、ジャンルレスで聴いているという意味では何かにも「カーペンターズが大好きだ」って書いてあった気がしますけど、その後の岡村くんのいいメロディとかに生きているような気がしますね。

田家:なぜ松田聖子、ビートルズ、プリンスか、っていうのも残っていて、日本最高が松田聖子、世界最高がビートルズ、今の世界最高がプリンスという。その3つだそうですよ(笑)。後に岡村さんは和製プリンスみたいな語られ方をするわけですが、当時はファンク一色みたいな感じではなかったですよね?

西岡:なかったですね。やっぱり曲も踊りのための音楽というよりは、メロディもしっかりしていたし、ヒット曲としてのクオリティも当時はまだJ-POPというのは言ってませんでしたけども、そういう認知のされ方はしなかったわけで。彼が影響されていたことはたしかですね。

田家:アルバムの中に渡辺美里さんに詞を書いている神沢礼江さんが書いた詞があって、これもいろいろ見ていたら、最初本人は詞を書くのはあまり乗り気じゃなかったという。やっぱりシンガーソングライターとして売り出していこうみたいなものはあったんでしょ?

西岡:いや、シンガーソングライターって感じではなかったですね。でも1つ1つ彼が発する言動とか、動きも含めて、そういうものを言葉にしちゃったらいいんじゃない? という。意外とそんなところから自由奔放に書いてみたら? という提案が小林くんあたりからあったのかもしれないな。

田家:小林和之さん。つまり、EPICソニーのそれまでのアーティストの中にマニュアルとか、ノウハウとか似た人がいなくて、本人を見ながら「え、こういうところもあるんだ」とか、「じゃあ、こういうのもやろう」みたいな感じだったんですかね。

西岡:と、思います。おっしゃられたようにシンガーソングライターとか、自分で曲を書いて、自分で歌うというのが主流だったと思うんですよ。そういう先輩方、佐野元春くんもしかり、美里ちゃんもずっとその後、詞も書いたりもしてますけども。そういう人たちの影響というので、その中で彼が詞を書くことになっていったんじゃないかなと思いますね。

田家:そういうアーティストの中にダンスという人はいなかったんですもんね。

西岡:なかなかいなかったですね。大沢誉志幸くんあたりっていうのはちょっとそのジャンルに入れられそうだけども、ちょっと大沢とダンスってあまり結びつかなくて、キメのポーズは一緒だけど(笑)。

福田:ダンスっていうキーワードはなかったですよね。

西岡:でもその後さ、EPICは「DANCE TO HEAVEN」っていうイベントはやったりもするんだけども、特にダンスでどうこうはなかったね。

田家:それは岡村靖幸という人がいたから、「DANCE TO HEAVEN」に繋がっていったみたいなところもあるんですか。

西岡:そうですね。「DANCE TO HEAVEN」=R&Bというか、ソウルとか、どっちかと言うとファンクだよね。

田家:まあ、マーチンがいましたしね。

西岡:そうですね。マーチンが1番ブラックミュージックというか、先輩という意味では1番近かったかもしれないですけど。

田家:でも、マーチンと岡村靖幸は違いますもんね。

Rolling Stone Japan 編集部

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