s-kenと高橋一(思い出野郎Aチーム)が語る、パンクを通過したダンスとレベルミュージック

s-ken:あと、JAGATARAのOTOも言っていたけれど、パンクを通過しているってことがかなり重要で。例えば、同じカーティス・メイフィールドを聴くにしても、パンクを通過した人にとってのカーティス・メイフィールドはそれ以前と見え方が違うと思うんす。パンク&ニューウエイヴ以前から当時ボブ・ディランに影響されてたヒトも多いですけれど、パンクを通過してボブ・ディランを見直すと、また違う感性で見えてくる。そして、若いバンドでそういうセンスを持ってるやついないかなと思ったら、思い出野郎Aチームが出てきたんです。

高橋一:いやいや、本当にそれはうれしい限りです。まさに僕らもソウルとかファンクと並行してパンクもすごく好きで。僕もパンクバンドでドラムを叩いてたときがあって。

s-ken:ドラムをやってたの?

高橋一:やってたんですよ、下手くそなんですけど。そういう意味でも惹かれたというか。所謂レベル・ミュージックがベースにあって、肉体的なダンス性が入っている。さっきのs-kenさんのお話で、スラムから新しいカルチャーが生まれていたというのは、社会的に弱者だったり、虐げられた人たちが戦って新しいものを作っていったという側面もあると思うんですよね。社会に抗いながら、カルチャーとしてもおもしろいものができている。そういった海外のシーンと「TOKYO SOY SOURCE」が同時代的に応答していたように思って、とても憧れました。たとえば、MUTE BEATはインスト・バンドですが、皮膚感覚でアナーキーなものが下地にあるように僕には感じられて、もの凄くクールでスタイリッシュでひたすら踊れる音楽なんだけど、レゲエがもつレベルミュージックとしての側面やパンク感も強く感じました。もちろん当時を知らない僕の勝手なイメージなのですが。

s-ken:クラッシュというバンドにもあったのは、パンク性と、もう1つは重要なのはレゲエ。リー・ペリーをカバーしてますよね。そういう感性はちゃんと「TOKYO SOY SOURCE」には存在した。そういう意味からの受け継いている若いバンドを探していたんだけど、3年前に『Share the Light』ってアルバムを聴いたとき、ぶっ飛んじゃったもんね。



高橋一:恐れ多いです。ありがとうございます。

s-ken:1曲目からよかったけど、2曲目の「朝やけのニュータウン」。僕が描く世界とは全く違うけども、ビビッと来た。前に出したアルバムの中に「夜を切り裂くテキーラ」って曲があって、夜を越えて行く感じ、あの曲と同じ感覚があって。ちょっとグッと来ちゃったんです。

高橋一:単純に我々はs-kenさんから影響を受けているので、それをそのまま感じていただいたと思うんですよね。まさかs-kenさんに知って聴いていただいていると知って、メンバー一同「え!」みたいな。

s-ken:(いとう)せいこうさんから聞いてたでしょ?

高橋一:そうですね。せいこうさんから「s-kenさんが、いいって言ってたよ」みたいなメールをもらって。「え! 本当ですか!」と、恐れ多くて。だって、スター・ウォーズで言うと、僕にとっては皆さんジェダイ・マスターみたいなものですから。市民にジェダイ・マスターから連絡が来た! みたいなノリで。

一同:(笑)

s-ken:MUTEもそういう意味では、ダブというものをただコピーするわけでなく、当時の空気を知った上でオリジナリティを持っているし、JAGATARAにしてもハードコアから抜け出してフェラ・クティみたいなものをパンキーに捉えている。それって世界的になかったし、かなり早かったんです。僕はアフロでパンクなの感じを、晩年なってさらに突き詰めているんですけど、「TOKYO SOY SOURCE」の真っ只中生まれた「よろめきながら地下鉄へ」という曲は自分としての最初のアフロパンクな発想だったと思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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