moonriders特集、鈴木慶一の自薦22曲と共にデビューから現在まで46年の歴史を語る

くれない埠頭(1st DEMO)/ moonriders

田家:これがデモですね。

鈴木:デモのテンポは本当に速いです。そういう曲を鈴木博文が作った。当時のマネージャーが「これ遅くした方がいい曲になるんじゃない?」って言ったんですよ。ジョージ・マーティンみたいですけど、遅くしてみようかと。遅くしたデモを今度はメンバーでもう1回録るんです。この頃は家庭用の自宅用のカセットの4chのレコードが出た。マルチですからね。みんな買うんです。自宅でデモを作るときにそれで録音する。それを持ち寄って聴いたりする。もちろん2chにミックスするわけですけど、だから自分の家でデモがちゃんとできるようになった。生ギター一本だけじゃなくてね。そんなことがあって、これは鈴木博文が歌っていましたけども、次に私が歌っている方はバンドのメンバーが演奏にも入っている。でも、テンポが速い。

田家:ボーカルも変えた。

鈴木:はい。最終的には正規版の「くれない埠頭」のテンポに落ち着くわけですね。



田家:〈吹きっさらしの夕陽のドック〉。

鈴木:こうやってテンポを落としたおかげで名曲となって、アンコールの定番になるわけです。

田家:「くれない埠頭」というイメージは何かあったんですか?

鈴木:冒頭に「monorail」がかかってます。モノレールが見えるところが堤防なんです。そこの左側に埠頭があって、言ってみればドックですね。船の工事現場みたいな。それが長いクレーンで吊ったりして、船を修繕しているんですね。それがすごく「くれない埠頭」だろお前って弟に言いました。「ここだろ? ここのこと作ったんだろ?」って(笑)。

田家:イメージはこれだろ? って(笑)。

鈴木:今はもうなくなってしまいましたけど。

田家:あー失われた風景ですね。で、『マニア・マニエラ』と『青空百景』を対の2枚ということで、今週はここまでということになりますね。

鈴木:ツイン・ピークスですね、これは。「くれない埠頭」はあらためて聴くと、無駄な音が一切入ってない。ここがよくできているなと。今回は分析的にmoonridersを語るということで(笑)。

田家:70年代から駆け抜けた、そしてここに来たという感じがありますね。今週は1976年から1982年ということで、この後にまたレコード会社が変わるわけですね。どんな時期に突入するんでしょう?

鈴木:ポストニューウェーブですよね。ニューウェーブの勢いが消えていっちゃって、次何やるかってときにニューウェーブで出てきたバンドが変化していく。1番顕著なのはXTCでしょうね。あのへんが素晴らしいアルバムを作っていく。そういうイギリスの音楽ばかりを聴いている感じですね。

田家:さあどんなアルバム、どんな曲が選ばれるでしょう。来週もよろしくお願いします!

鈴木:はい! こちらこそ。

田家:FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」。4月20日に11年振りのアルバム『It’s the moooonriders』を発売したmoonridersの軌跡を辿る1ヶ月。今週はパート3。今週から3週続けて鈴木慶一さん自薦22曲で辿る46年をお送りしようと思います。今日は1976年から1982年でした。流れているのはこの番組の後テーマ竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

Rolling Stone Japan 編集部

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