小田和正、最新作『early summer 2022』を評論家・小貫信昭と語る



田家:アルバム2曲目「坂道を上って」。映画『坂道のアポロン』主題歌ですね。

小貫:これは小田さん自身が中学高校と通っていた学校が、本当に坂の上というか丘の上にあって、毎日最寄り駅から坂道を上がっていった。自分の体験と、この映画も生徒が坂を上がっているシーンもあるんですけど。そういう意味で自分の中学高校時代と風景が重なり合うということで、感情移入をしやすかったというようなことは言ってらっしゃったと思います。

田家:小貫さんはオフ・コース、小田さんに初めて出会ったのはいつになるんでしたっけ?

小貫:5人の最後の方、本格的には4人になってからじゃないですか。

田家:どんなふうに出会ったという?

小貫:最初はコンサートを観て、「文章を書かないか?」って言われて、それが伝説のオフ・コース10日間コンサートという。

田家:1982年の。

小貫:それを書いたら、その後も依頼が来たという感じなんですけども。

田家:当時からご覧になっていて、小田さんの活動、オフ・コースも含めて坂道がずっとあったのではないかなと思ったりもしますけども。上らなければいけないことがたくさんあった。70年代の坂道とか、80年代の坂道とか、きっと坂が違ったんだろうなと。

小貫:ある種、コンサートツアーとかもまだツアーと言っても点で行っていた時代で。

田家:よく回れない時代ね。

小貫:自分たちの照明を雇って、ツアーの体制を整えた時期とかいろいろありましたよね。わりとポジティブな考え方なんだろうと思うけど、ヘーゲルの弁証法的な感じですよ。

田家:AがあってBがあって。

小貫:その両方を合わせたCがあって、CがまたAになる。頑張っていればだんだん良くなっていくだろうという考え方だから続いているんだろうと思います。何の話をしているのだか分からない(笑)。

田家:何を話しているんだろう僕らは(笑)。思春期のことは映画があったりしないと、なかなか素直に書けないかもしれないですね。何も分かってなかった僕らみたいなことはね。

小貫:映画原作の人が常に小田さんとかオフ・コースの音楽を聴きながら仕事をされている方みたいで、おそらくこの物語にも小田さんの感覚が入っていたのかなと。

田家:なるほどね。「風の坂道」という名曲もありましたもんね。今回のツアーは今までのツアーとは違うハードルがあったりするんだろうと思ったりするんですけど。

小貫:でもやっぱり年齢なりのセットリストとかにしていくんじゃないですかね。

Rolling Stone Japan 編集部

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