岡村靖幸の名盤『家庭教師』、当時のプロモーターが背景を語る



田家:『家庭教師』の3曲目「(E)na」。(E)、アルファベットの小文字でna。カッコイーナ。なかなか読める人いなかったんじゃないですか?

福田:当時は誰も読めなかったですね。イ-ナって読んだ人も少なかったような気がしますね。

田家:こういうタイトルにするのは意図的だったんですよね。

福田:タイトルの件に関しては岡村くんと話したことないので分からないですけど、わりと数式っぽいというか、どう読んだらいいんだろう。でも、読み方を教わると、あ、すごいっていうところが岡村くん的な。遊びって言うとちょっと違うのかなあ。なんかそういう投げかけがあったんじゃないでしょうかね。

田家:当時の岡村さんのこととか書いてあるものを読んだら、EPICソニーが媒体や取材の人たちの対して、音楽の話は訊かないでくれというお達しをしたというのがありましたよ。

福田:はい、本当です(笑)。これはEPICの人がというか、彼は歴史的にあまり音楽の話をしたことないんじゃないかと思うんですよね。もちろん自分の作品に関しては一切してないですし、人の作品に関してもほぼしたことなくて。自分の言葉で自分の作品を語るということ自体に抵抗があるというか。それは岡村くん流の自分の作品への愛情の裏返しな気がしていて。変に説明臭くなると、本当に伝えたいことが伝わらない。そこで自分の作品が損なわれることが嫌だったんじゃないかなと思います。最初にプロモーションの話をした時に、音楽の話はしない。これは雑誌もラジオもテレビも全部。それが大条件で。

田家:でも、プロモーターとしては福田さんが媒体を回ったりするわけでしょ。その時に岡村さんとこのアルバムについてこんな話をしましょうみたいな打ち合わせはなかったんですか?

福田:ないです。

田家:じゃあ、例えば媒体の人が福田さんに「今回のこのアルバムはどういうコンセプトでお作りになったんですか?」みたいな話を訊かれた時にどうお答えになったんですか?

福田:僕の言葉として、たぶん答えていたと思います。岡村靖幸の言葉じゃないという前提で答えていたと思いますし、どこかの雑誌でセルフライナーノーツって話が来て、やらなきゃいけなくなったので、岡村くんに「申し訳ない、俺やっちゃうよ」って話をして。それも僕の言葉で『家庭教師』のライナーノーツをつらつらと(笑)。

田家:どんなことをお書きになったか、この後にお訊きしていこうと思います(笑)。「(E)na」は体が動く曲ですね。

福田:そうですね。僕がいいなと思うのは、もちろん曲もそうなんですけど、ライブのパフォーマンスなんですね。

田家:ライブが見えますもんね。

福田:このアルバムを引っさげてパルコ劇場の6日間のライブと、その後の全国ツアー「ライブ家庭教師91」を行って。当時岡村くんの横にケンくんとコウジロウくんという2人の若い男性のダンサーがいて、彼ら2人と岡村くんのダンスのコラボレーションというか、ギターソロがすごくかっこいいんです。だから、この「(E)na」っていうのは音源でもかっこいいんですけど、ライブは何十倍かっこいいですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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